体を動かし身体機能を高めて腰痛解消

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イラスト図解:腰背部の構造・骨格・筋肉

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腰や体を鍛えて丈夫にする治療法

腰痛の主要な治療法の一つに「運動療法」があります。
症状に応じた適度な運動を行い、筋力、体力、柔軟性といった身体機能を高めることで腰の負担を減らし、症状の改善を図ります。
腰痛に対して高い治療効果があることが科学的にも証明されている治療法です。

主な運動の種類と効果、痛みが和らぐ仕組み、運動時の注意点などについて解説します。

<目 次>

  1. 運動の重要性と得られる効果
  2. 運動の種類
    1. 柔軟体操(ストレッチング)
    2. 全身運動(有酸素運動)
    3. 筋力トレーニング(無酸素運動)
  3. 運動を行う際のポイント、注意点

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1.運動の重要性と得られる効果

◆慢性的な腰痛に有効

腰痛は痛みが続く期間の違いによって大きく2つに分けられます。筋肉痛やぎっくり腰のような一時的な腰痛である「急性腰痛」と、骨や椎間板の変形、筋肉の衰え、肥満やストレスなどが原因で、痛みが長期的に続く「慢性腰痛」です。(参考:急性腰痛と慢性腰痛

急性腰痛はしばらく腰を休ませていれば良くなるため、鎮痛剤などで痛みを和らげつつ安静を続けることで十分対処できます。しかし、痛みの原因がより深刻で複雑な傾向がある慢性腰痛の場合、こうした対処法では一時的に痛みを和らげることはできても、痛みの根本的な原因を取り除くことはできません。

慢性腰痛の多くは、腰まわりの筋肉や骨が衰えて腰を支える力が弱くなった結果生じます。更にストレスや内臓の病気が関わっているケースもあります。運動療法は、腰を丈夫にするだけでなく、肥満やストレスの解消効果や、体力・免疫力の向上によってケガや病気を遠ざける効果もあります。
慢性腰痛の治療に役立つだけでなく、腰痛の再発を抑える高い予防効果も期待できます。

急性腰痛でも運動は大事

急性腰痛は急激な炎症を伴うことが多いため、腰を動かすと炎症が強まって症状が悪化することが多いです。そため体を動かさずに安静にすることが鉄則です。ですが、痛みが和らいである程度動けるようになったら、多少痛みが残っていても歩いたり仕事をしたりして無理のない範囲で体を動かしたほうが、安静にするよりも治りが早いことが分かっています。安静にしすぎることは回復を遅らせ、かえって状態を悪くしてしまうこともあります。

運動療法の効果

※『腰痛診療ガイドライン』より抜粋

  • 急性腰痛(4週未満)には効果が無い
  • 亜急性腰痛(4週〜3か月)に対する効果は限定的である
  • 慢性腰痛(3か月以上)に対する有効性には高いエビデンス(科学的根拠)がある
  • 運動の種類によって効果の差は認められない
  • 最適な運動量、頻度、期間については不明である
  • 理学療法士などの管理下で行うことがよく、認知行動療法などと併用すると良い
  • 運動療法は腰痛の発症予防に有効である

◆運動によって得られる効果

運動で得られる健康増進効果


1.腰が強くなる・腰を支える力が強まる

運動で適度な負荷をかけると、腰の骨が丈夫になり、腰まわりの筋力も強くなります。
腰部の背骨である「腰椎」は、腰の中心を通り、周囲を筋肉や靭帯によって支えられています。これらの組織が強化されることで腰を支える力が強まり、背骨もまっすぐに保てるようになります。

腰痛体操やストレッチを行うと筋肉や靭帯の柔軟性が高まり、関節の可動域(動く範囲)も広くなります。その結果、腰への負荷や衝撃をよく吸収・分散できるようになります。


2.姿勢が良くなる

姿勢の悪さは腰痛の大きな原因の一つです。腹筋や背筋が鍛えられると上体が安定するため、猫背などの悪い姿勢になりにくくなります。また、体の老化が進むほど骨盤が前傾して背骨の歪みがひどくなりますが、運動によって筋力を強化したり老化を抑えることで、背骨の形を正常に保つことができます。(参考:背骨のゆがみと腰痛


3.体の老化を防ぐ

適度な運動を行うと、体の老化のスピードが遅くなり、体の組織を若く保てます。

腰椎の構造
椎間板、椎間関節の図

「軟らかく柔軟性のある筋肉と靭帯」、「若く水分に富んだ柔軟な椎間板」、「スムーズに動く関節」、「緩やかなS字カーブを描いた背骨」、こうした若く健康的な状態は、体重や外部からの衝撃による腰への負荷を吸収・分散する機能を高めます。


4.血行が良くなる

運動を行うことで体が温まり、筋肉や靭帯の緊張が和らいで軟らかくなり、血液の流れが良くなります。血行が良くなると炎症物質や疲労物質が排出されやすくなるため、痛みが和らぎ回復も早まります。また、柔軟な組織によって負荷や衝撃を吸収する働きが強まり、痛みが起こりにくくなります。(参考:温熱療法


5.体力がつき、病気やケガの予防になる

運動で体力がつくと、抵抗力(免疫力)が高まり、病気にかかりにくくなります。運動によって新陳代謝(血液の循環)が良くなり、心肺機能も向上して、特に心臓病や脳卒中、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の予防に役立ちます。他にも、適度な負荷がかかることで骨が丈夫になり、骨粗しょう症の予防にもつながります。

身体機能が高まることで、物にぶつかったり転倒することが少なくなるほか、無理な姿勢をとったり接触事故などにあった時にもケガをしにくくなります。


6.肥満を防ぐ

運動で痩せる

太って体重が増えれば腰の負担が増すほか、内蔵の病気を発症しやすくなるなど、腰痛の危険性が高まります。運動でエネルギー(カロリー)消費量が増えれば肥満の解消につながるほか、筋肉量が増えると基礎代謝(何をしなくても消費されるエネルギーの量)が高まるため、太りにくい体質になります。(参考:肥満による腰痛のリスク



7.ストレス解消になる

不安やストレスなどの心の不調が原因で起こる腰痛は心因性腰痛症と呼ばれ、原因不明の腰痛の多くを占めます。適度な運動を行うことはストレス解消にも効果的であり、心の健康にも良い影響があることがわかっています。うつ病などの精神的な病気の治療法としても取り入れられています。
また、痛みは快感によって軽くなることが科学的に証明されています。ゆっくりと景色を楽しみながら散歩をするなど、運動によって爽快な気分を味わうことができれば、直接痛みの軽減にもつながります。(参考:快感は痛みを和らげる

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2.運動の種類

運動療法の内容は、種類別に大きく3つに分けられます。
腰をゆっくり動かして曲げ伸ばしする「柔軟体操・ストレッチング」、基礎体力の向上や肥満・ストレスの解消につながる「全身運動(有酸素運動)」、腰まわりの組織を強化する「筋力トレーニング」があります。


2-1.柔軟体操・ストレッチング

上体そらし体操

腰のゆがみを矯正する体操

椎間板ヘルニアなど腰椎の異常が原因の腰痛では、腰をある方向に曲げると痛みが生じ、逆方向に曲げると痛みが和らぐ傾向があります。
こうしたケースでは、痛くない方向に腰を曲げる体操を行うことで、症状を緩和させることができます。これは、体操を継続して行うことで、腰椎のゆがみが矯正され、神経などの周辺組織が刺激されにくくなるためです。

例えば前かがみになると腰が痛む場合には、上体を後ろに反らす体操が有効で、逆に腰を反らせると痛む場合は、腰を丸める前屈運動が有効です。有名なものに「ウイリアムス体操」や「マッケンジー体操」などがあります。
腰椎の変性が軽度〜中程度であれば特に良い効果が得られます。

関節の動きを良くする体操

運動不足によって筋肉が衰えたり、腰の使いすぎで筋肉疲労がたまったりすると、筋肉が固くこわばり血行が悪化します。すると関節の動きが悪くなったり、関節の動く範囲(駆動域)がせまくなるなどの異常が起きて、腰に大きな負荷がかかりやすくなります。

このように腰の動きが悪い時に有効なのが、腰まわりや太ももの筋肉をゆっくりと伸ばす運動です。
筋肉や靭帯を伸ばすストレッチを続けることで、柔軟性が向上して関節がスムーズに動くようになります。筋肉の血行も良くなるので、より痛みが軽減されます。また、腰の組織に刺激を与えることで新陳代謝も良くなります。


「柔軟体操・ストレッチング」の目的・効果
  • 腰椎のゆがみを矯正する
  • 筋肉や靭帯の柔軟性を高め、緊張をゆるめる
  • 関節の動きを良くし、可動域(動く範囲)を広げる
  • 体の深部の筋肉(インナーマッスル)を鍛える

具体的なやり方や体操法は、別項でイラスト付きで詳しく紹介しています。


2-2.全身運動(有酸素運動)

全身を使う運動・ウォーキング

有酸素運動とは、大きな力を必要とせず、比較的ゆっくりとした動作で全身を動かす運動で、リズミカルな呼吸によってたくさんの酸素を取り込みます。
代表的なものは、散歩・ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳などです。走ることを例に挙げると、適度な負荷で長距離を走る「ジョギング」は有酸素運動ですが、強い筋力や瞬間的な強い力(瞬発力)が必要で、体に大きな負荷がかかる「短距離走」は無酸素運動になります。

体にあまり大きな負担がかからないため、筋力トレーニングなどの無酸素運動に比べて障害が発生する危険が少なく、比較的安心して行えます。

全身運動の特徴・効果

酸素を体内に多く取り込み、糖質や脂肪を効率よく燃焼させることができます。時間あたりの消費エネルギーが大きいため、肥満の解消・防止効果が高く、生活習慣病予防にも役立ちます。
全身に適度な負荷を与えることで、骨や筋肉などの体の組織を無理なくバランスよく鍛えられるため、体が丈夫になり安定感が増してケガをしにくくなります。
心肺機能や血管の機能が高まり、血液の循環と新陳代謝がよくなって、体の老化を遅らせることができます。
継続して行うことで、体力や抵抗力(免疫力)がつき、病気にもかかりにくくなります。
苦痛を感じない範囲で気持ちよく行うことで、爽快な気分になり、ストレスが解消されます。

  • 体が丈夫になる
  • 体力や抵抗力がつく
  • 肥満やストレスが解消される
  • 組織を若く保つ(老化を遅らせる)

各運動法の具体的なやり方や注意点については、別項で詳しく解説しています。


2-3.筋力トレーニング(無酸素運動)

腹筋を鍛えて腰痛防止

腹筋運動や背筋運動、重りを使ったウエイトトレーニングなど、体に重い負荷をかける運動「筋力トレーニング」は、筋肉、骨、靭帯などの組織を強く丈夫にします。
腰まわりの組織が鍛えられることで、腰を支える力が強くなり、良い姿勢を保ちやすくなる効果もあります。
また、筋肉量が増えることで基礎代謝が上がるため、エネルギーが消費されやすく太りにくい体質になります。

「筋力トレーニング」の目的・効果
  • 筋肉、靭帯、骨を強化し、腰椎を支える力を強くする
  • 筋肉を増やし、血液の流れ(血行)を良くする
  • 基礎代謝を高め、肥満を防止する

※具体的なやり方・トレーニング法については別項で詳しく解説しています。


治療よりも予防に効果的

腰痛になった後に腹筋や背筋を鍛えても、痛みの改善効果は低いです。筋力が弱すぎたり、バランスが極端に悪い人なら一定の効果はあるかもしれませんが、普通に運動ができるくらいの人は、腰を支えるのに十分な筋肉量があるため、更に鍛えることで腰痛が良くなることは少ないです。腰を痛めている時に更に負荷をかけて疲労させることで、かえって症状を悪化させかねません。それよりも姿勢や動作に気を配って腰に負担をかけないことの方が重要です。

筋力トレーニングは腰痛になる前に行うことで効果を発揮します。腹筋・背筋をバランスよく鍛え、腰を支える力が強くなるほど、腰椎にかかる負荷を減らせるので、腰痛の予防に大変効果的です。

筋力トレーニングが必要な人

特別に筋力トレーニングを行う必要があるのは、筋肉がとても衰えていて、姿勢が自然に悪くなるような人です。体をほとんど動かさない若い女性や高齢者に多いです。普通に運動ができるくらいの人なら、必ずしもトレーニングを行う必要はありません。通常の運動、スポーツ、柔軟体操などでも必要な筋肉は十分につきます。とはいえ筋肉が無いよりはあった方がいいのは確かなので、頑張って鍛えることには問題ありません。

重要な筋肉

腰痛予防のために特に鍛えておきたい筋肉は、お腹まわりの「腹筋」と「背筋」、骨盤まわりの「腸腰筋」、太もも前後の筋肉「ハムストリングス」と「大腿四頭筋」です。また、背骨を安定させ良い姿勢を保つためには、腰と背中の深層の筋肉「脊柱起立筋」と「大腰筋」も重要です。筋肉の位置や働きについては腰のイラスト図解を参照してください。

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3.運動を行う際のポイント・注意点

◆いくつかの運動を組み合わせて行う

柔軟体操、有酸素運動、筋力トレーニングの3種類の運動は、それぞれ得られる効果が異なります。一つだけ行うよりも、複数並行して行うほうが治療効果は高くなります。まんべんなくできれば一番ですが、初めから全て行うのは大変ですので、まずは自分に一番必要と思われるものから試し、慣れてきたら徐々に色々な運動法を取り入れていきましょう。

◆継続して行う

運動で最も大事なことは「継続すること」です。例えば運動の効果を得るためには合計で20時間以上続ける必要があるというデータがあります。1日30分行った場合でも1か月以上かかることになります。できれば毎日、忙しくても週に2、3回は運動を行うようにしましょう。AAOS(アメリカ整形外科学会)では、腰の筋力強化・早期社会復帰を目的とした場合、10〜30分の運動を1日1〜3回行うように勧めています。
継続することが大切とはいえ、自分で決めた目標やノルマは必ずこなすという厳しいルールを作ってしまうと、無理をして症状を悪化させる危険性が高まります。あまり気負わずに、大体の目安をほぼ毎日続けるといった気楽な心構えで臨みましょう。

継続するための工夫

普段から体を動かす習慣がある人でもない限り、毎日続けるのは難しいものです。運動を続けやすくする工夫・対策をしましょう。

まず、どんな運動をするか決める際には、一般に腰に良いとされているものを選ぶより、自分が行って楽しいかどうかを基準としたほうが続けやすいです。
また、初めからきつい運動を行ったり高い目標を設定せず、まずは外出する機会を多くしたり、気分転換の散歩を日課にしたり、家事をしっかりこなすなどの簡単なことから初めてみるのも効果的です。ほかにも、目標を設定して達成したら自分にご褒美をあげるとか、毎日体重の記録をつけるなど様々な方法があります。

可能であれば、一緒に運動をする仲間を作ることがオススメです。夫婦や友人など仲の良い人と一緒に行ったほうが楽しくて長続きします。趣味のスポーツサークルや会員制のスポーツクラブを利用するのも良いでしょう。

◆しっかり準備してから行う

指導者付きの運動

豊富な運動の経験や予備知識もなく、自己判断だけで安易に運動を初めてしまうと、思わぬトラブルに見舞われる恐れがあります。
運動経験の少ない人や腰痛の症状がひどい人は、運動の種類、量、強さなどについて事前に医師と相談してから行った方が安全です。特に椎間板ヘルニア脊柱管狭窄症骨粗しょう症の患者、関節の変性が進んでいる人、痛みが激しい人、持病のある人、通院中の人などは、必ず事前に医者の指示を仰いで下さい。

準備運動・整理運動

思わぬケガや腰痛の悪化を起こさないよう、運動の前には入念すぎるくらいの準備運動(ウォーミングアップ)を行い、腰の筋肉や関節をしっかりほぐしておきましょう。運動後の整理運動(クーリングダウン)も大事です。整理運動は筋肉の疲れをとり、回復を早めたり筋肉痛の予防効果があります。

◆適度な負荷で行う

運動は自分の体力や筋力に見合った強度で行うことが重要です。
軽すぎる運動では思ったほどの効果が得られなかったり、十分な効果を得るまでに時間がかかってしまいます。激しすぎる運動では、運動を長く続けられずに効果が下がってしまったり、腰を痛めて逆効果になることもあります。

丁度よいとされる負荷の目安は以下のとおりです。負荷の調節ができない運動の場合は、無理なくできる回数でかまいません。

  • 柔軟体操 : やや痛みを感じるが筋肉が伸びて気持ちよさも感じる「痛気持ちいい」くらい
  • 全身運動 : 息が軽くはずんで会話もできるくらい
  • 筋力トレーニング : 一つの動作を最大15〜20回続けられるくらいの負荷

全般的に見て、"ややきつい"と感じる程度の負荷だと、体に大きな負担をかけずに十分な運動効果を得られる目安のようです。自分に合った強度と運動量を覚えておいて、物足りなく感じるようになったら少しずつ負荷を大きくしていきましょう。

◆体に異常を感じたら休む

体調が悪く気分がすぐれないとか、腰に激しい痛みや違和感・不快感などを感じる場合には、無理をせずにその日は運動を休むようにしましょう。運動中にこうした症状が現れた場合は、すぐに運動を中止して休息し、症状が治まるのを待ってください。症状が治まらないようならすぐに病院を受診しましょう。
特に以下のような症状が見られた場合は、例え症状が治まったとしても大事をとって診察を受けることをおすすめします。

  • 足腰に強い痛みやしびれを感じる。または足腰に力が入らない
  • 頭痛やめまい、激しい動悸、息切れなど
  • 冷や汗が出たり、気分が悪くなる

◆急性期の腰痛に対しては行わない

ぎっくり腰のような急激で激しい痛みがある間は、腰を動かさずに痛みが和らぐまでは安静にしましょう。
ある程度痛みが和らいできて動けるようになってきたら、腰を過保護にせず、できる範囲で通常の生活を送るようにすると回復が早まります。運動を行うのは完全に痛みがひいてからにしましょう。


関連項目


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