骨粗しょう症で腰が痛むケース

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『骨粗しょう症』の詳細 - 症状・原因・治療法

腰痛を引き起こす可能性のある病気や障害の一つに「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」があります。これらの障害と腰の痛みの関連について解説します。

<目 次>

  1. 主な症状
  2. 原因や特徴
  3. 診断・治療・予防

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1.骨粗しょう症が疑われる症状

腰の痛みのほかに、以下の様な症状・特徴が見られる場合、骨粗しょう症が発症している可能性があります。

イラスト:円背・亀背


  • 腰の痛みが長くしつこく続く(慢性的な腰痛)
  • 背中の痛み
  • 若いころより背中や腰が丸まってきた(曲がってきた)
  • 身長が縮んだ気がする
  • ちょっとした衝撃で骨折してしまう
  • 転倒やしりもち、くしゃみなどをきっかけに痛みはじめた

骨粗鬆症は痛み以外にはあまり自覚症状がない病気です。多くの場合、漫然とした腰や背中の痛みが見られます。常に痛いとは限らず、突然激しく痛んだかと思えば数日経って治まるといったことを繰り返すケースもあります。

腰に大きな負担をかけたとか、原因がはっきりと思い当たるようなこともなく痛み始めることが多く、ちょっとした転倒や、せき・くしゃみなどの衝撃をきかっけに痛み始めたり、それ以降寝たきりになってしまうこともあります。

痛み以外では、以前に比べて腰が曲がって猫背になってきたとか、背が低くなったと感じる場合も骨粗鬆症が発症している可能性があります。また、こうした症状が女性の「閉経期(50歳前後)」を過ぎた後に現れ始めた場合、骨粗鬆症の可能性が高まります。

◆骨粗しょう症で生じる痛みについて

腰や背中の慢性的な痛みは、背骨が骨折したために生じる場合と、骨折の影響で周囲の筋肉や靭帯に余計な負荷がかかり、これらの組織が傷んで生じる場合があります。

また、骨折しても必ず痛みがでるとは限らず、骨折に気がつかないでいるケースもよくあります。
腰や背中が曲がってきたり、背が縮んだり、腰や背中がだるいといった違和感を感じて病院を受診した結果、骨折が判明したり、健康診断で偶然判明することもあります。


2.骨粗しょう症とは? - 特徴や原因

健康な人の骨は、中身がしっかりとつまっていてとても丈夫です。ところが様々な要因によって骨の密度(骨量)が減り、最終的には骨の内部がスカスカになってもろくなる病気が骨粗鬆症です。
骨が弱くなると、外部からの衝撃によって圧迫骨折をしやすくなります。

画像:骨粗鬆症でもろくなった骨

骨量が減っただけでは殆ど自覚症状はありませんが、骨折することで様々な症状が現れます。

骨折する箇所は「背骨」が最も多く、腰痛のほか、背中の痛みや腰が曲がるといった症状が出ます。次に多いのが「手首」の骨折で、60歳代の高齢者に多くみられます。70歳以上になると、転倒による太ももの付け根の骨折が多くなり、寝たきりの原因にもなります。

骨折は別の病気を引き起こす原因にもなります。
骨折によって骨の体を支える働きが弱まると、周囲の筋肉や神経などに過剰な負担や刺激を与えるためです。全く関連がないと思われる離れた箇所に障害が現れることもあります。

◆なぜ骨がスカスカになるの?

骨は一度作られたものがずっと使われている訳ではありません。皮膚や血液と同じように、骨の内部では常に新しい骨が作られ、同時に古い骨が壊されて新しい骨へと生まれ変わっています。1つの骨なら約3〜4ヶ月、全身の骨なら約3年で全く新しい骨に入れ替わります。

ところが年齢を重ねるごとに、新しい骨を作る働きが衰え始めます。骨密度は20〜30代が最大で、それ以降は徐々に減っていきます。そこに加齢以外にも骨の成長を妨げる要因が加わると、骨量がますます減ってスカスカの状態になってしまうのです。

骨量を減少させる要因

  • 加齢
    歳をとるとホルモンバランスの変化によって腸からカルシウムを吸収する働きが悪くなります。これは自然な老化現象なので、程度の差はあっても誰にでも必ず起こります。

  • 女性ホルモンの変化
    骨の代謝には女性ホルモンの「エストロゲン」が深く関わっています。エストロゲンには骨の形成を進め、骨の破壊・吸収を抑える働きがあります。しかし女性が生理が終わる「閉経」を迎えると、エストロゲンの分泌が急激に減るため骨量が減少します。

  • カルシウムやビタミンDの不足、日光浴の不足
    骨の主成分はカルシウムです。原料となるカルシウムが不足すれば当然骨量も減ります。またカルシウムは体内に吸収されにくい栄養素で、その吸収を助けるビタミンDの不足も骨量低下につながります。更にビタミンDは日光にあたることで活性ビタミンDとなり機能し始めます。せっかくカルシウムやビタミンDを摂取しても、外出せずに室内にこもっていてはあまり効果がありません。

  • 運動不足
    骨は適度な衝撃や負荷を受けることで成長が促進され、強く丈夫になります。若い頃にあまりスポーツをしなかったり、大人になってからも体を動かす機会の少ない人は骨が弱くなります。

  • やせすぎ
    痩せすぎている人は必要な栄養が不足して骨も細く弱い傾向があります。特に短期間で過度のダイエットを行うことは、骨だけでなく心と体の健康に悪影響を与えます。

  • 飲酒、喫煙、カフェインの過剰摂取
    タバコに含まれるニコチンには血管収縮作用があり、血流が悪くなることで骨に十分な栄養がいかなくなるほか、胃腸の働きを悪くしてカルシウムの吸収を妨げ骨密度を低下させます。またアルコールやカフェインを摂り過ぎると、カルシウムの吸収を阻害したり、尿にたくさんのカルシウムが溶け出すようになります。

  • 精神的ストレスや病気
    ストレスがたまりすぎると、腸からカルシウムが吸収されにくくなります。また、糖尿病、肝臓病、慢性腎臓病、甲状腺疾患などで骨量が減ることがあります。

  • ステロイド薬の長期投与
    ステロイドによる副作用の一つに骨量の減少があります。

  • 遺伝的要因
    家族に骨粗しょう症にかかった人がいる場合、骨粗しょう症になる可能性が高くなります。

◆骨粗しょう症になりやすい人

高齢者に多い転倒による骨折

前述したような危険因子を多く持つ人ほど骨は弱くなります。それでも男性や若者なら、ちょっとした衝撃でも骨折してしまうほど弱くなることはまれです。
極端に骨がもろくなる骨粗しょう症は、閉経後の女性に圧倒的に多く見られます。

女性は50歳前後で生理がなくなる「閉経」を迎え、閉経後は骨の形成に関わる女性ホルモン「エストロゲン」の分泌量が激減して骨量が減少します。特に70歳以上になると骨粗しょう症の割合が急激に増えます。男性にはほとんど見当たりません。
50歳以上の女性の約40%に脊椎の圧迫骨折が見られ、骨折患者のうち60代女性の約10%、70代女性の30〜40%に骨粗しょう症が見られるとのデータもあります。

また、妊娠中や授乳期の女性にも見られることがあります。これは胎児や母乳にカルシウムをたくさんとられてしまうためです。

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3.診断・治療・予防

◆診断

骨密度の検査
イラスト図解:骨密度検査

専用の検査機器を使って骨密度を測定するほか、X線検査(レントゲン)を行い、画像上で骨がスカスカの状態になっているか、骨折があるかなどを確認します。

そのほか、血液検査や尿検査で、骨を形成・破壊する細胞の働きを調べたり(骨代謝マーカー)、身長を測って若い頃より背が縮んでいないか調べることも骨粗しょう症の判別に役立ちます。

◆治療

もろくなった骨は、カルシウムなどの必要な栄養を摂取してもすぐには元に戻りませんので、時間をかけてゆっくりと治療を行っていきます。

薬を服用する「薬物療法」、道具を使って患部を固定する「装具療法」、患部を温めて血行を促進し痛みを緩和する「温熱療法」、筋力トレーニングや柔軟体操で身体機能を高める「運動療法」、必要な栄養をとる「食事療法」といった保存的療法を、症状に応じて組合せて行っていきます。

症状が軽度なら、カルシウムやビタミンDなど骨の形成に必要な栄養を食事で十分に摂取し、同時に軽い運動を行って骨や筋肉の強化を図ります
閉経後の女性など、骨量が大きく減少していて食事だけでは対応できない場合は、薬物療法も行います。骨の代謝を助ける活性型ビタミンD3製剤、女性ホルモンであるエストロゲン製剤、骨からカルシウムが溶けるのを抑えるビスフォスフォネート製剤やカルシトニン製剤などを服用します。痛みがあれば痛み止めの鎮痛剤を服用したり、神経に麻酔薬を注射する神経ブロック療法も行います。

70〜80歳の高齢になると、骨を作る「造骨細胞」自体が減ってくるため、通常の薬物療法では骨の再生が難しいケースもでてきます。こういった場合には、副甲状腺ホルモンというホルモン剤を注射します。これは造骨細胞を増やす効果があり、細く弱い骨でも太く丈夫にすることができます。

骨折している場合は、コルセットなどの装具で患部を固定し安静にします。痛みが和らいで動けるようになってきたら少しずつ歩き始め活動量を増やしていきます。骨折が治ってから骨量を増やす治療を始めます。

手術を行うケース

イラスト図解:セメント治療

骨折の状態によっては自然回復が難しいこともあります。こういった場合は、骨折してつぶれた骨を取り除き、空洞になった部分にセメント状のリン酸カルシウムを注入して骨を強化する「経皮的椎体形成術」という手術が多く行われています。よくセメント治療と呼ばれます。

◆日常生活における対策・予防法

誰でも歳をとるほど体が老化して骨は弱くなっていきます。これは自然な老化現象なので完全に止めることはできません。しかし、適度な運動と睡眠、バランスの良い食生活など、健康的な生活を送ることで骨量の減少はかなり抑えられます。

節制・規則正しい生活

  • 栄養バランスのよい食生活
    積極的に摂取すべき栄養素は、骨の形成をサポートするたんぱく質、カルシウム、マグネシウム、ビタミンD、ビタミンKなどです。中でもカルシウムは日本人に不足しがちで体内に吸収されにくいため、吸収を助けるビタミンDといっしょに毎日十分な量を摂取しましょう。
    【参考】必要な栄養素と豊富に含む食材

  • 陽の光を十分に浴びる
    ビタミンDは太陽の光を浴びることで活性ビタミンDに変わり、骨を形成するために働いてくれます。日光に当たる時間は一日5〜10分で十分です(冬場はこの倍くらい)。あまり外出しない人は、運動も兼ねて毎日の散歩やウォーキングを習慣づけると良いでしょう。

  • 適度な運動
    骨は"適度"な負荷をかけることで成長し、強く丈夫になります。大きな痛みや苦しさを感じない範囲で、筋力トレーニングやウォーキングなどの運動を行いましょう。骨が弱っていても安静にしすぎるのは良くないので、家事や散歩で軽く体を動かすだけでも治療や予防効果があります。ただし、すでに骨粗しょう症になっている場合は、逆に悪化したり骨折することがあるので、医師の指導を受けた上で行ってください。
    【参考】運動療法

  • 適正な体重の維持
    太り過ぎは骨に過大な負荷をかけ、やせ過ぎや無理なダイエットは栄養不足で骨を弱らせます。食事は暴飲暴食はせず、適度な量と十分な栄養を摂取しましょう。

  • 家庭内の住環境の改善
    骨折の原因となる転倒を防ぐことも大切です。高齢者のいる家庭では、家の中に手すりをつけたり、大きな段差をなくすなどの工夫をしましょう。

  • 定期的な検査を受ける
    骨折しても痛みが見られないこともあります。症状がないからといって放っておくのはよくありません。背骨を構成する小さな骨が一つ潰れただけでも寿命が縮むことが研究で分かっています。中高年者は定期的に骨密度検査を受け、骨の健康状態を把握しておいたほうがよいでしょう。検査は整形外科をはじめ、検査機器をもっている医療機関ならどこでも簡単に受けられます。

4.骨粗しょう症データ

【受診科】

  • 整形外科

【骨粗鬆症の原因となる病気】

  • 糖尿病、慢性腎臓病、肝臓病、甲状腺疾患

【骨粗鬆症が原因で起こる病気(合併症)】

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