子宮筋腫で腰が痛むケース
『子宮筋腫』の詳細 - 症状・原因・治療法
腰痛を引き起こす可能性のある病気や障害の一つに子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)があります。
ここでは、その特徴や腰痛との関連について解説します。
1.子宮筋腫が疑われる症状
腰の痛みのほかに、以下の様な症状・特徴が見られる場合、子宮筋腫が発症している可能性があります。
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自覚症状で一番多いのが「過多月経」と「不正出血」です。
月経血の量が徐々に増えてゆき、何日たっても止まらなくなります。極端に増えるとレバーのような大きな血の塊ができます。また、月経時以外に性器から出血することが多くなります。
こうして出血が増えることで貧血になることがよくあります。
その他の症状
- 下腹部に"しこり"がある
- 下腹部の張りや痛み、不快感など
- 水のようなさらさらしたおりものが増える
- 強い月経痛(生理痛)、月経周期が短くなる「頻発月経」
- 膀胱・排尿障害(便秘、おしっこの回数が増える(頻尿)、排尿・排便時の痛みなど)
→筋腫が大きくなると腸や膀胱を圧迫するために起こる - 流産・不妊
→筋腫が小さく何の症状もない場合を除き、筋腫のこぶは受精卵の着床や妊娠の継続の妨げになることがある - 頭が重い、頭痛、めまい、だるさ、胃もたれ、吐き気、乳房の張りや痛みなど
どういった症状が現れるかは子宮筋腫のタイプや大きさによって異なります。また、子宮筋腫が小さいうちは症状が出ないことが多く、大きくなってから現れるのが普通です。かなり大きくなっても自覚症状がなく、子宮がん検診で見つかるといった例も少なくありません。
◆症状が似ている女性の病気
子宮内膜症と症状がとても良く似ています。
子宮筋腫と診断された症例のうち、本当に子宮筋腫であるものは半分くらいで、残りは実際には子宮内膜症であったり、子宮筋腫と子宮内膜症が合併しているなどのケースといわれます。
2.子宮筋腫とは? - 特徴や原因
主に子宮内部の筋肉の層(子宮筋層)にできる良性の腫瘍が子宮筋腫です。
なお、子宮内にできる良性の腫瘍のことを子宮ポリープといい、子宮内膜にできる「子宮内膜ポリープ」と、子宮の入り口にできる「子宮頸管ポリープ」があります。症状は子宮筋腫とほぼ同じです。
筋腫は丸いコブのような形状で、コリコリとして弾力性があります。筋腫と正常な組織との境界は比較的はっきりしているので、手術で簡単に取り出すことができます。
筋腫は子宮内の色々な箇所に発生し、その形状やできる個数も様々です。別々の箇所に同時に何個もできることもあります。最初は小さな芽のようなものですが、それがだんだん大きくなるにつれて様々な症状を引き起こすようになります。
筋腫が子宮に与える影響は、発生箇所、大きさ、数などによって違ってきます。ごくまれに悪性腫瘍(がん)に変化することもありますが、その確率は0.5%以下と子宮がんの発生よりはるかに少ないです。
子宮筋腫がよく見られる年代は30〜40代です。
30代の女性の約20%に筋腫があると言われ、40代で最も多くなります。20代から発生することも少なくありませんが、若い頃は筋腫が小さいため症状が出にくく、中には一生気付かずに過ごしてしまうこともあります。
◆腫瘍ができる原因
原因は詳しく分かっていません。
思春期から大きくなり始め、月経が終わる閉経後に小さくなることから、女性ホルモン「エストロゲン(卵胞ホルモン)」が大きく関係していると考えられています。妊娠中は特に多く分泌されるため、筋腫が急速に大きくなります。ただし人によってはできないこともあり、その理由も不明です。
◆子宮筋腫の種類
筋腫が発生する場所や形状によってそれぞれ違った名称で呼ばれます。
- 筋層内筋腫
子宮壁内の子宮筋層にできるもので、全体の約70%を占めます。筋腫が小さいうちはほとんど症状がなく、成長するにつれて様々な症状が現れてきます。 - 漿膜下筋腫
子宮の外側をおおう漿膜(しょうまく)にできるもので、子宮の外側に向かって発育します。全体の約20%を占めます。
子宮の形がほとんど変わらず症状も現れにくいため、筋腫ができたまま妊娠することも多く、無事に出産する人もいます。筋腫が大きくなると、筋層内筋腫と同様に様々な症状が出てきます。 - 粘膜下筋腫
子宮内膜のすぐ下にできるものです。発生頻度は少ないですが、子宮の内側の子宮腔内で発育するため、子宮全体が大きくなったり形が変わったりします。筋腫が小さくても症状が現れやすく、過多月経、不正出血、強い月経痛などを起こし、出血しやすいのが特徴です。
筋腫がポリープのようにぶら下がって子宮口から外に出たものを筋腫分娩(きんしゅぶんべん)といい、大出血を起こすことがあります。
このほか子宮頸部にできる「頸部筋腫」もあります。
※イラスト出典:公益社団法人「日本産科婦人科学会」
3.診断・治療・予防
◆診断
過多月経や不正出血などの自覚症状から子宮筋腫が疑われる場合は、より精密な検査を行います。
超音波検査、CTスキャン、MRI検査、子宮鏡検査(ヒステロスコピー)などで筋腫の有無を確認し、診断を確定します。
【関連項目】
◆治療・予防
子宮筋腫は良性の腫瘍で、がん化することはほぼありません。
よって、筋腫が小さくて症状がない、または症状が軽く日常生活に支障がない場合は、治療を行わず定期的な検診で様子をみます。痛みや貧血に対して薬を服用することもあります。
こうした軽症のケースでは、筋腫があっても妊娠・出産することは可能です。また、閉経後の更年期に発見された筋腫の場合も、年齢とともに小さくなって消えることも多いので経過を観察します。
場合によっては、ホルモンバランスを調整する薬によって一時的に月経(生理)を止める治療法もとられます。低用量ピル(経口避妊薬)、プロゲステロン、ダナゾールなどの薬を半年ほど服用して、症状を軽くしたり筋腫を縮小させたりします。
手術が必要になるケース
以下のような場合は筋腫を取り除く手術を行います。
- 重い症状があり大きな苦痛を感じている
→過多月経、不正出血、貧血、筋腫による他の臓器の圧迫などが重症化しやすい - 筋腫が大きくなりすぎたり、短期間で急速に大きくなっている
- 筋腫以外の症状が出てきた
- 筋腫が妊娠・出産をさまたげている可能性がある(筋腫以外に不妊や流産のはっきりとした原因がない)
良性の筋腫の手術は、術後も妊娠・出産ができるようにコブになっている部分だけを切除し、子宮や卵巣は可能な限り残すのが原則です。
筋腫だけを取り除く「子宮筋腫核出術」は妊娠の可能性を残せますが、筋腫の芽を取り残してしまうと筋腫が再発して再手術が必要になることもあります。
妊娠を希望しない場合は、再発や再手術を防ぐために子宮を全て取り除く「子宮全摘術」を優先します。また、卵巣に異常があった場合は卵巣を摘出することもあります。なるべく片方の卵巣は残す努力をします。
筋腫が大きすぎず出産の経験がある人の場合は、お腹を切らずに膣を通して行う「膣式手術」が可能です。「筋腫が大きい」、「他の組織との癒着やがんの疑いがある」といった場合は、お腹を切開する「開腹手術」を行います。
4.子宮筋腫データ
【受診科】
- 婦人科
【子宮筋腫が原因で起こる病気(合併症)】
【関連項目】