「脊椎カリエス」で腰が痛むケースについて
『脊椎カリエス』の詳細 - 症状・原因・治療法
腰痛を引き起こす可能性のある病気や障害の一つに「脊椎(せきつい)カリエス」があります。
ここでは、その特徴や腰痛との関連について解説します。
1.脊椎カリエスが疑われる症状
腰の痛みのほかに、以下の様な症状・特徴が見られる場合、脊椎カリエスが発症している可能性があります。
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【初期症状】
症状の進行は比較的遅く、初めは腰や背中の背骨のあたりに軽い痛みやコリが発生し、慢性的に長く続きます。患部をたたいた時にも痛むのも特徴です。また、「疲れやすい」「だるい」「食欲がなく体重が減る」といった全身症状も現れてきます。
【中期】
病状が進むと徐々に痛みが強まってきます。夜寝ている時など安静にしていても痛むようになり、微熱が出ることもあります。患部に膿(うみ)がたまってコブができたり、脊椎の破壊や変形によって背骨が後ろに曲がったりします。
【重症時】
更に症状が悪化すると、中枢神経である脊髄が侵されて、下半身のしびれやマヒや起きたり、尿がでにくい・もれる(失禁)・おしっこの回数が増える(頻尿)といった排尿障害が起こってきます。
症状が似ている病気
【関連項目】
2.脊椎カリエスとは? - 特徴や原因
結核の原因となる「結核菌」が、血管を通じて脊椎(背骨)に転移・感染して起こる病気が脊椎カリエスです。結核性脊椎炎とも呼ばれます。
細菌感染した部位に炎症が起こり、脊椎の椎骨や椎間板が破壊されて膿(うみ)が発生します。感染した部位によって胸痛、背中痛、腰痛などが起きます。
破壊の進行が遅いため、初期の症状は軽く慢性的です。病気に気付かずに放っておくと破壊が広がって脊椎が変形し、背中が曲がってきます。変形した脊椎が神経を圧迫すると、下半身麻痺などの重篤な症状が現れることがあります。
脊椎カリエスは結核の流行した1950年代に多く見られ、難病とされてきましたが、結核の治療法が確立されてからは急速に減少し、あまり見られなくなりました。
◆結核菌の感染経路
過去に肺結核や腎結核にかかったことのある人や、発症はしなくとも結核菌に感染した経験がある人は、病気が治った後でも結核菌が肺などに残っていて、それが免疫(抵抗力)の低下などの理由で再び活性化して発症する「二次性疾患」のケースがあります。
他にも周囲の結核患者からの感染、BCG注射からの感染などがあります。
免疫力(抵抗力)を低下させる要因
悪性腫瘍(ガン)、糖尿病、肺炎、膠原病、肝硬変、骨髄疾患など、全身性の病気にかかっていると免疫力が大きく低下します。
病気以外には「年齢」、「過労状態」、「ストレス」などの要因もあります。
幼児や高齢者は免疫力が低いほか、仕事続きで疲れていたり、不安やストレスが溜まっていたり、睡眠不足だったり、栄養バランスが悪かったりと、不規則で不健康な生活を続けている人も免疫力が低下します。
こうした要因が重なるほど、より抵抗力が低下し、色々な病気を発症しやすくなので要注意です。
椎炎カリエスの原因
「体内に残っていた結核菌の再活性化による感染」
3.診断・治療・予防
◆診断
(MRI画像)
痛みなどの特徴から細菌感染が疑われる場合、病状を詳しく調べるため血液検査や画像検査を行います。
血液検査で、白血球数や特定のタンパク質の濃度などを調べます。
また、病気の初期に椎間板が侵されて薄くなることが特徴なので、X線検査(レントゲン)で確認します。更に溜まった膿を確認したり、詳しい病状や病巣の広がりを見るために、MRI検査、CTスキャン、骨シンチグラフィなどの画像検査も行われます。
最終的な判断は「生検(針で組織の一部を採取する検査)」で患部の組織を採取し、結核菌の有無を調べます。
【関連項目】
◆治療
病気が初期の段階ならば、感染した部位をギプスやコルセットで固定し、安静にしながら抗生物質の点滴を行う薬物療法が基本です。炎症が治りにくい時は、炎症部分を電気やレーザーを使って焼き固める治療が行われることもあります。
こうした保存的療法で効果がない時や、骨の破壊が進んでいたり下半身のマヒがあるなど重症化した場合は手術を行います。手術で脊椎の病巣を取り除き、破壊された骨への対処として、骨固定術や骨移植手術も行われます。
【参考】
周囲への感染を防ぐために、疑いがあればすぐに検査を受けることが大切です。
正しい治療を受ければ、やや時間は長くかかるものの必ず治る病気です。
4.脊椎カリエスデータ
【受診科】
- 整形外科
【脊椎カリエスの原因となる病気】
- 結核(肺結核や腎結核など)