腎盂腎炎で腰が痛むケース
『腎盂腎炎』の詳細 - 症状・原因・治療法
腰痛を引き起こす可能性のある病気や障害の一つに「腎盂腎炎(じんうじんえん)」があります。
ここでは、その特徴や腰痛との関連について解説します。
1.腎盂腎炎が疑われる症状
腰の痛みのほかに、以下の様な症状・特徴が見られる場合、腎盂腎炎が発症している可能性があります。
【急性腎盂腎炎】
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急性腎盂腎炎の症状
はじめにゾクゾクとした寒気やふるえがあり、38℃を超える高熱を発します。胸のむかつきや嘔吐、全身の倦怠感が出てきて、腰や腎臓のあたり(わき腹)に痛みを感じることが多いです。背中に痛みが見られることもあります。尿の回数が増え、残尿感や排尿時の痛みなど膀胱炎の症状も出てきます。
慢性腎盂腎炎の症状
基本的な症状は急性とほとんど同じですが、症状は軽めで、はっきりした症状が現れなかったり、症状が出たりおさまったりを繰り返すこともあります。
病気が進行すると、尿量の増加、血圧の上昇、強いめまいや頭痛が出てきてます。放置しておくと最終的には腎臓の機能が著しく低下して尿毒症の症状が現れます。
急性も慢性も風邪によく似た症状なので見過ごしてしまわないように注意が必要です。発熱を繰り返すような時は病院で尿検査を行いましょう。
2.腎盂腎炎とは? - 特徴や原因
腎臓内の腎盂(じんう)や腎杯(じんぱい)といった組織が細菌に感染して炎症を起こしたものを腎盂炎といい、炎症が腎臓全体にまで広がったものが腎盂腎炎です。
◆細菌感染の原因
腎臓で作られた尿は、尿管をとおって膀胱へ送られます。尿管が膀胱へ入る部分は弁のようになっていて、一度膀胱に入った尿は逆流しない仕組みになっています。しかし、この逆流防止弁が膀胱炎などでうまく働かないと、膀胱の中の細菌がおしっこをするたびに上部へ逆流して腎臓へと感染します。
大腸菌などの腸内細菌による感染が多く、「尿道→膀胱→尿管→腎臓」という下から上への感染ルートが大半です(尿路上行性感染)。また、細菌が血液中に入って感染する場合を血行性感染、リンパ管に入る場合をリンパ性感染といいます。
腎盂腎炎は、膀胱炎など尿路感染症にかかりやすい女性に多く見られ、発病率は男性の約2倍です。
また、尿管に結石があったり、前立腺肥大や尿道狭窄など、尿の流れを妨げる要因があると細菌が増えやすく発症しやすくなります。細菌感染を引き起こす別の病気が原因となっている場合もあります。
◆腎盂腎炎の慢性化
通常の腎盂腎炎(急性腎盂腎炎)は、適切な治療をすれば比較的簡単に治ります。
しかし、治療が十分でなく再発を繰り返したり、病気に気づかずに長期間放置されたりすると、細菌感染が何度も起きて腎盂腎炎が慢性化します(慢性腎盂腎炎)。
放置して不摂生を続けると、場合によっては10〜20年という長期の慢性状態に陥ることもあります。先に述べたような尿の流れを悪くする病気を持っている場合も、再発・慢性化しやすくなります。
慢性腎盂腎炎は、急性に比べて症状は軽めですが治りにくく、病気が進行すると腎臓の機能が徐々に失われ、最終的には腎不全になることがあるため油断は禁物です。腎不全の患者の1%ほどが、慢性腎盂腎炎が原因となっています。そのほか、萎縮腎や敗血症といった合併症を引き起こすこともあります。
3.診断・治療・予防
◆診断
主に尿検査と血液検査によって診断を確定します。
腎盂腎炎は感染症であるため尿が濁り、尿内に多くの細菌や白血球が含まれます。血尿の有無も参考になります。
血液中では、細菌感染による白血球の異常増加や、炎症反応によるCRP値の上昇が見られます。
【関連項目】
◆治療
多くの場合、入院が必要です。
安静を保ちつつ、細菌を死滅させる抗生物質を注射する化学療法を基本に行います。
そのほか尿量を増やすために水分を多くとり、尿路に結石が見られる場合にはこれを除去する治療も行います。他の病気が原因となっている場合はその治療もあわせて行います。重症時は必要に応じて手術も行います。
腎盂腎炎は早期に発見して適切な治療を受ければ比較的簡単に治ります。しかし再発も多い病気ですので、退院後も2〜3ヶ月は通院して定期的に尿検査を行いながら経過を観察する必要があります。
再発を繰り返したり長期間放置すると、慢性化して治りにくくなります。また、末期には腎不全などの重篤な状態に陥ることもあります。
症状が風邪によく似ているため、発見が遅れることも少なくありません。発熱が続いたり、頻尿、残尿感などの尿の異常が見られる場合は、早めに腎臓内科か泌尿器科を受診しましょう。
4.腎盂腎炎データ
【受診科】
- 腎臓内科、泌尿器科
【腎盂腎炎の原因となる病気】
- 尿路結石、尿道狭窄症、前立腺肥大症、膀胱炎、糖尿病、痛風など
【腎盂腎炎が原因で起こる病気(合併症)】
- 尿毒症、腎不全、腎萎縮、敗血症など