腰痛の原因となりうる障害や病気は非常に数多く存在しますが、大きく4種類に分けることができます。
「1.腰の骨や筋肉といった組織の損傷」「2.神経障害」「3.ストレスや鬱などの心理的な要因」「4.内臓の病気」のそれぞれについて、具体的にどういった病気や障害があるのか、症状や原因の概要と共に一覧表示しています。
<目 次>
腰の中心には腰椎(腰部の背骨)があり、固い骨「椎骨」と、軟らかい軟骨「椎間板」が折り重なってできています。骨同士は椎間関節という関節で連結されており、積み重なった骨が崩れないように腰椎の周囲は靭帯や筋肉によって支えられています。
こうした腰の組織が、様々な要因によって刺激を受けたり、損傷したりすると腰痛が発生します。
※痛みの発生する詳しいメカニズムや、腰に負荷をかける要因については別項で詳しく解説しています。
腰まわりの筋肉疲労による痛み(筋肉痛・挫傷・捻挫・肉離れなど)
レントゲンなどの画像をみても腰まわりの組織に異常がなく、明らかな原因を特定できない腰痛の総称
椎間板が押しつぶされたり亀裂が入った状態。病状が進行すると椎間板ヘルニアになる
椎間板が押しつぶされ、中にあるゼリー状の物質(髄核)が外に飛び出した状態
背骨の内側の神経の通り道「脊柱管」が狭くなり、神経が圧迫される障害
椎骨を支える椎間関節が骨折して分離したり、分離したことで椎骨が前方にずれる障害
腰部の背骨(腰椎)が加齢などで変形したもの
股関節の骨や軟骨がすり減ったり変形したりして痛みを引き起こす病気
通背骨(脊椎)が左右に歪んて曲がってしまう病気
骨の密度が減り、骨の内部がスカスカになってもろくなる病気
背骨や骨盤の関節組織が何らかの原因で骨に変わり、骨同士がくっついてしまう病気
ウイルスや細菌などの外敵から体を守る"免疫システム"に異常が発生する病気「膠原病」の一種
脊椎(背骨)に細菌が侵入して炎症を起こし膿(うみ)がたまる病気。
結核の原因となる結核菌が脊椎に感染して炎症を起こす病気
脊髄(中枢神経)や脊椎(背骨)やにできる、良性または悪性の腫瘍
お尻から足先に向かって伸びる坐骨神経は1mもの長さがあり、腰から太もも、足先まで広い範囲の知覚をつかさどっています。
椎間板ヘルニアなどによって腰の組織が変形し、坐骨神経が圧迫されたり炎症を起こしたりすると、神経の支配する広い部位で強い痛みやしびれが生じます。
また、神経は痛みの信号だけでなく、感覚や運動の信号も伝達します。そのため脊髄や馬尾神経などの主要な神経が障害されると、痛みやしびれのほかに、マヒ、脱力感、感覚の鈍り、排尿障害などが起こることもあります(馬尾症状)。
※神経性の痛みについては別項で詳しく解説しています。
腰から足先に向かって伸びる坐骨神経が圧迫を受けたり炎症を起こしたりするもの
過去に水ぼうそうを起こしたウイルスが体内で再び活性化するもの
近年まで、腰痛とは腰の骨や椎間板、神経などの損傷・異常によって起こるものだと考えられていました。
しかしその後の研究によって、腰痛の原因はもっと多様で複雑なものであり、さらに原因不明の腰痛の多くには、多かれ少なかれ精神的ストレスなどの心の問題が関わっていることが判明しています。
こうした腰痛は心因性腰痛症と呼ばれ、ストレスの多い現代社会において多く見られるようになりました。
ストレスや悩みといった心労が重なると、自律神経などの体の痛みを制御するシステムに異常が生じて、通常では感じられない痛みを感じたり、弱い痛みを何倍にも強く感じるようになります。ストレスが解消されない限り腰痛が完治しないため、「慢性的な腰痛」には精神的・心理的な要因が関わっているケースが多く見受けられます。
精神的ストレスが原因となって起こる腰痛
胃、肝臓、腎臓、子宮などの内蔵器官の病気の中には、症状の一つとして腰痛が生じるものがあります。
一見、腰とは関係のない箇所の障害で腰痛が発生するのは、臓器周辺に発生した痛みが腰にまで響いたり(放散痛)、ある部位の痛みを別の部位の痛みと脳が勘違いしたり(関連痛)、病巣が腰の近くの組織まで広がって痛みをもたらしたりするためです。
内科的疾患は専門的な検査を受けなければ判断できないものばかりです。直接的な原因がわからない腰痛がある場合は、必ず専門医の診断を受け、原因となっている病気の治療を行わなければなりません。
内科的疾患が原因の腰痛は全体の1%ほどです。しかし病気の種類によっては見逃したら命取りになることもあります。腰痛のほかに上記のような症状が見られる場合は、すみやかに医療機関で診察を受けるようにしましょう。
胃や十二指腸の粘膜が溶けてえぐられたような状態(潰瘍)になる病気
胃に発生する悪性腫瘍
胃の下の部分が正常な位置よりも垂れ下がっている状態
肝臓に炎症が起きた部分の細胞が壊れて硬くなり肝臓の機能が低下した状態
肝臓に発生する悪性腫瘍
膵臓から分泌される消化酵素によって膵臓自体が消化されて炎症を起こす病気
膵臓にできる悪性腫瘍
胆嚢が細菌に感染して炎症を起こした状態
胆のうや胆管内に石(胆石)ができる病気
大腸に発生する悪性腫瘍
尿の通り道に石(結石)ができる病気
腎臓が細菌に感染して炎症を起こした状態
腎臓やその周りの組織が細菌に感染し、炎症を起こして腫れ上がる病気
腎臓に尿がたまる病気
腎臓の動脈がふさがって血液が流れなくなり、腎臓の一部または全部が壊死してしまう病気
腎臓に1個〜数個の「嚢胞」と呼ばれる液体の入った袋ができる病気
腎臓の静脈に血の塊(血栓)ができて血液の流れが悪くなったり血管が詰まってしまう病気
腎臓が本来あるべき場所よりも下に移動してしまっている状態
子宮の内側にできる膜「子宮内膜」が、子宮以外の場所にもできる病気
子宮内部にできる良性の腫瘍
子宮にできる悪性腫瘍(がん)
子宮の出入口の細菌感染で炎症が発生する病気
女性の場合、「月経(生理)中」や、月経が終わる50歳前後の「更年期」は、女性ホルモンのバランスが大きく変化します。その影響で心と体に様々な不快症状が現れます。腰痛もよく見られる症状の一つです。
月経時に起こる様々な不快症状
月経に様々な異常が生じるもの
50歳前後で月経が終わる「更年期」を迎えると、女性ホルモンの変化で心身につらい症状がでる
腹部の大動脈の一部がふくらんで瘤(こぶ)のようになる病気