腰痛を引き起こす可能性のある病気や障害の一つに「脊椎側弯症(せきついそくわんしょう)」があります。
ここでは、その特徴や腰痛との関連について解説します。
腰の痛みのほかに、以下の様な症状・特徴が見られる場合、脊椎側弯症が発症している可能性があります。
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脊椎側弯症になると、通常は真っ直ぐなはずの背骨(脊椎)が横方向に曲がってしまい、裸になって背中を後ろから見たときに背骨が"S字状"または"逆S字状"に曲がっているのがわかります。それによって体がゆがみ、前屈した時に左右の肩や背中の高さが明らかに違うのが見て分かるようになります。
病気の初期や症状が軽い場合は、痛みなどの自覚症状がないことが多く、学校の検診や他人からの指摘で背骨の異常に気づくことが多いです。
症状がある程度進行すると、腰や背中に痛みが出てきます。重症になると、心臓や肺が圧迫されて呼吸困難などの心肺機能の障害が起こることもあります。
正常な状態の背骨は、体の前後から見た時にまっすぐ直線を描いています。これが左右にゆがみ、その上ねじれも加わる病気を脊椎側弯症または脊柱側弯症といいます。
脊椎側弯症は、脊椎が曲がる原因によって「機能性側弯症」と「構築性側弯症」の大きく2種類に分けられます。
機能性側弯症は、"姿勢の悪さ"、"筋肉の発育不良"、"肥満"、または椎間板ヘルニアなどの病気によって一時的に側弯が起こるもので、脊椎のねじれはみられません。
構築性側弯症は、脊椎を構成している個々の骨(椎体)が変形することで生じるものです。その多くは原因が分からない突発性側弯症で、脊椎側弯症全体の約70%を占めます。これは学童期、思春期の子ども(特に10代の女子)に多く見られ、成長とともに徐々に進行します。
突発性側弯症は、更に発症時期ごとに「乳幼児側弯症」「学童期側弯症」「思春期側弯症」に細分化されます。
構築性側弯症で原因が分かっているものは以下のとおりです。
<機能性側弯症>
姿勢の悪い人、日常的に片方の肩に大きな負荷をかけている人(カメラマンなど)、椎間板ヘルニアなど脊椎の病気や障害のある人(または経験のある人)。
<構築性側弯症>
骨や筋肉が成長過程にある10代の子ども。特に女の子や肥満児。
脊椎側弯症は、脊椎が前や後ろに曲がる「前弯症」や「後湾症」も加わって、前後左右に複雑に弯曲することがよくあります。こうなると治療も長く困難なものになってきます。
症状が進行すると腰椎(腰部の背骨)や他関節の負担が大きくなり、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症を併発することがあります。また心臓や肺が圧迫されてこれらの臓器の病気を引き起こすこともあります。
正常な脊椎と曲がった脊椎(X線画像)
主に視診、触診、X線検査(レントゲン)で診断します。
症状が軽度の場合、痛みなどの自覚症状がなく、見た目にもわかりにくいため多いためX線検査は必須です。
ある程度症状が進行していれば、背骨の歪みが見ただけではっきり分かりますが、確実に診断するためにX線撮影も行います。
【関連項目】
早期に発見されて側弯が軽度であれば、コルセットなどの装具をつけて曲がった脊椎を矯正する「装具療法」、矯正体操を行う「運動療法」、骨を上下に引っ張る「牽引療法」などの保存療法を行い、脊椎のゆがみを治します。
治療期間は長くなりがちで、場合によっては背骨の成長が終わる17〜18歳まで続けられるため、本人にも家族にも根気が必要です。
以下のようなケースでは、金属のネジやプレートを使ってゆがみを矯正する脊柱側弯矯正手術を行います。
他の病気が原因となっている場合は、その病気の治療も並行して行います。
脊椎側弯症は児童や学生に多く見られるため、小学校〜高校の健康診断では背骨の検査を行うことが「学校保健安全法」により定められています。「脊柱検査」や「モアレ検査」等の名称で呼ばれます。私立の学校では行われないところもあります。
日常生活における子供の指導ポイントとしては、姿勢が悪くならないようにする、重い荷物を継続して持たない、骨や筋肉の成長のため栄養バランスの良い食事をとり、食べ過ぎによる肥満を防ぐといった点が重要です。また、肩や背中の体型に気を配り、異常があれば早めに整形外科を受診してください。症状が進むと、治療が長引いたり他の病気を引き起こすことがあるので、早期発見と早期治療が大切です。
【受診科】
【脊椎側湾症が原因で起こる病気(合併症)】