病院で行われる腰の治療方法

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医療機関で行われる主な治療法

<目 次>

  1. 治療の流れと治療法の分類
  2. 保存的療法
  3. 外科的療法(手術療法)

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1.治療の流れや分類

◆治療法の分類

腰痛に対して病院などの医療機関で採られる治療法は大きく二つに分類されます。
1つ目は、体を切開したり穴を開けるなどの外科的処置を行わずに治療を進める方法です。
内容や種類は様々ですが、総称して保存的療法と呼びます。組織や臓器そのものや、それらの機能が失われずに"保存"される治療法です。単純に手術以外の方法と考えて良いでしょう。
2つ目は、患部を切開して様々な処置を施す外科的療法(手術療法)です。

◆治療の流れ

手術でなければ治療できないような重症のケースを除き、初めは症状に応じた保存的療法をいくつか組合せて治療を進めます。一定期間治療を行っても症状が改善されない場合は手術も検討するというのが一般的な流れです。

単純に症状の重さだけでなく、患者自身が症状をどのくらい負担に感じているか、またどんな治療を望んでいるのかも重要です。こうした要因を考慮した上で、どういった治療法が適切か総合的に判断します。


2.保存的療法

体を切開するなどの外科的処置を行わずに治療を進める「保存的療法」には様々な種類があります。
主な治療法とその概要について解説します。

2-1.薬物療法

痛みをコントロールするための薬物を服用する治療法です。
炎症が激しく痛みが強かったり、安静にしていても痛みがとれない場合に、これらを和らげたり解消したりする目的で行われます。

使用される主な薬剤


特に痛みが激しい場合は、神経に直接麻酔薬や鎮痛薬を注射し、神経の経路を一時的に遮断して痛みを感じなくする「神経ブロック療法」も採られます。

薬の形態は、患部に直接貼り付けたり塗りつけるタイプの「外用薬」、口や肛門から服用する「内用薬(内服薬)・座薬」、患部に直接注入する「薬物注射」があります。

薬物療法については別項で詳しく解説しています。


2-2.運動療法

適度な運動によって腰まわりの筋肉、骨、軟骨、靭帯などの組織を強化して機能を向上させたり、組織の老化を遅らせたり、ストレスを解消したりすることで腰痛の改善を図ります。

運動の主な内容は、腰痛体操や柔軟体操、骨や筋肉を強化する筋力トレーニング、体力の向上や肥満の解消にも役立つ全身運動(ウォーキングなど)があります。

痛みが激しい時は、腰を動かさずに安静にしていることが原則です。しかしある程度痛みが和らいで動けるようになってきたら、無理のない範囲で積極的に体を動かしたほうが安静にするよりも治りが早いことが分かっています。安静にしすぎると回復を遅らせ、かえって状態を悪くしてしまうこともあります。

運動による主な治療効果

このように、ただ腰を強くするだけでなく、腰痛改善につながる様々な健康効果が得られます。
また、今現在生じている痛みを和らげるほか、将来の痛みの発生を抑える「予防効果」が高いのも特徴です。

運動療法については別項で詳しく解説しています。


2-3.温熱療法

腰を温めることで血液の流れ(血行)を促進する治療法です。
血行が良くなると、炎症や痛みの元となる化学物質や疲労物質が流れ出てゆきやすくなり、痛みが和らいだり回復が早まります。また、筋肉が柔らかくなり関節の動きも良くなるため、腰にかかる負荷や衝撃を吸収・分散する働きが強まります。体の動きが良くなることでケガもしにくくなります。

医療機関では、電気・超音波を使った専用機器やホットパックを使用します。家庭でも、入浴、カイロ、腹巻き、サポーターなど、様々な方法で手軽に患部を温めることができます。

温熱療法については別項で詳しく解説しています。


2-4.装具療法

腰の保護、固定、動きの安定を目的とした器具「装具(そうぐ)」を腰まわりに取り付けることで、腰の負担や痛みを軽減する治療法です。
腰の装具には、コルセットや腰用サポーターなどがあります。

装具の効果

過度の使用は逆効果にも

装具をつけると腰が楽になるのは、装具が腰の筋肉や靭帯の代わりに体を支えてくれるからです。
こうした組織は、使われないと細く弱くなっていきます。装具に頼りすぎて漫然と長い期間使い続けると、腰を支える力が弱くなり、装具を外した後に痛みはかえって悪化してしまいます。

6ヶ月程度の装着では大きな影響はないとも言われていますが、装具への依存心を強めすぎないためにも、ある程度痛みが和らいできたら装具は外し、筋肉を鍛える運動療法などの治療法に移行していきましょう。コルセット治療は、ぎっくり腰やヘルニアなどで「急で激しい痛み」が見られる腰痛の急性期のみに行うことが合理的です。
どうしても使い続けたい場合は、腰巻きのような薄手のコルセットをつけている程度なら問題ないでしょう。

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2-5.牽引療法(けんいんりょうほう)

専用の装置を使って腰を上下にひっぱり、腰椎(腰部の背骨)の骨の間隔を広げる治療法です。

期待される主な効果


主に腰椎の圧迫を軽減させる効果が期待されます。例えば椎間板ヘルニアでは、椎間板が圧迫されて中身が飛び出て神経を刺激しますが、圧迫が弱まれば症状が軽くなることがあります。

何かにぶら下がって腰を伸ばすと腰が気持ちよく感じるように、牽引療法を行うと気分が良くなることも多いです。しかし、牽引療法が腰痛の治療に有効であるという科学的根拠は不足しており、その効果はいまだ実証されていないのが現状です。
イギリスの「急性腰痛治療ガイドライン」では、急性腰痛に牽引療法は効果がないと紹介されています。また、患者の状態によっては症状を悪化させる恐れがあるという指摘もあるなど、牽引療法を適応する際には患者の症状をよく見極める必要があります。


2-6.電気療法、レーザー療法

◆電気療法

腰に電流を流し、電気刺激による様々な治療効果を得る方法です。体内にペースメーカーや金属が入っている人には使えません。

<治療法とその効果>


電気療法による腰痛への治療効果については、十分な科学的根拠はありません。


◆レーザー療法

患部に弱いレーザー光線を当てて、痛みを軽減させたり回復を早める治療法です。
レーザーによって、「神経の活動や免疫活動(ウイルスなどの外的に対する防御反応)が活発になる」、「血管が拡張して血行がよくなる」、「毛細血管がたくさん作られる」といった効果が得られ、痛みが和らぐと考えられていますが、詳しい仕組みは明らかになっていません。


2-7.徒手療法(としゅりょうほう)

解剖学や骨格学の専門知識のある医師が、それらの知識に基づき、手を使って患者の整体やマッサージを行う治療のことです。
例えば、近年腰痛治療に大きな成果を上げて注目された徒手療法に、仙腸関節のゆがみを矯正する「関節包内矯正」があります。

民間施設でも、整体やカイロプラクティックなど似たような治療を行うところは多いですが、人体の構造(解剖学)を熟知していない未熟な施術者が行う治療は危険をともない、かえって病状を悪化させることにもなりかねません。
民間療法による治療を希望する場合には、まず医師とよく相談し、その上で施術者が専門的な知識と十分な経験を持っているかどうかを確認してから治療を受けましょう。


2-8.認知行動療法

腰痛は、ストレスや不安などの心の不調によって生じるケースも多く見られます(心因性腰痛症)。
こうした腰痛は、仕事や家庭における悩みや不満のほかに、病気や痛みに対する過度の恐れ・歪んだ思考・思い込み、治療に関する強いこだわり、医療不信などが原因となっている場合もあります。

認知行動療法とは、痛みそのものを取り除く治療法ではなく、病気や医療、痛みなどに対する間違った思い込みを持っている患者に対し、考え方(認知)がゆがんでいることを気付かせ、行動を変えていく手法です。
痛みがあっても様々な活動が可能であることを患者に自覚させ、痛みに振り回されず自分でコントロールするという視点を持てるようにします。

例えば、痛みを恐れるあまり安静にしすぎて運動不足になる人には、そういう行動をとってしまいがちなことに自分で気づかせます。また、腰痛があるから仕事も趣味も全くできないと思い込んでいるなら、少しぐらい腰痛があっても支障はないことに気づくように、痛みに対する考え方を少しずつ直していきます。

具体的な内容や治療の効果については別項で詳しく解説しています。


2-9.化学療法・放射線療法

◆化学療法

抗菌作用のある薬(抗生物質)や、がん細胞の増殖を抑える薬(抗がん剤)を投与する治療法です。
骨の細菌感染が原因で腰痛が発生する化膿性脊椎炎脊椎カリエス脊椎や脊髄に発生する悪性腫瘍(がん)の治療などで行われます。

<内容と効果>


◆放射線療法

放射線をあてて、がん細胞を死滅させる治療法です。抗がん剤による化学療法と同じく、「手術が難しい場所に腫瘍がある」、「ガンが広範囲に広がっている」、「高齢で手術の負担に耐えられない」などの場合に適応されます。がんの再発予防にも効果があります。

転移の進んだがんの手術をする場合、化学療法、放射線療法、免疫療法などを組み合わせて行うことが多く、そうすることで各治療法の相乗効果が得られ、治療効果・再発予防効果が高まります。


3.外科的療法(手術療法)

腰痛の治療の基本は、これまで紹介したような「保存的療法」です。一定期間は保存療法を行い、症状が改善するかどうか様子を見ます。
しかし以下のようなケースにおいては手術による治療も検討されます。

手術を行うケース


ひと昔前までは、手術といえばメスで患部を大きく切除するような大がかりなものが主でした。しかし近年の医療技術の向上により、現在では内視鏡を使った体の負担の少ない手術や、手術以外の治療法も併用した効率的な方法が考案され、同じ症状に対する手術法の選択肢が増えてきました。
各手術法には長所と短所があり、どの方法を実施するかは、腰の状態、患者の体力や年齢、本人の希望、普段の生活環境などを考慮して決定します。

主な手術法とその内容は、別項で詳しく解説しています。

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