腰痛の発症の仕方は様々です。突然ぎっくり腰のような激痛が起きて動けなくなったら、不安ですぐに病院に行かなければと思うかもしれません。日常生活に支障がない程度の痛みなら、自然に治るだろうと放っておくことも多いでしょう。
ここでは腰痛が生じた時にどう対処すべきかを解説します。また、急な激痛に襲われた時の対処法、良い医療機関の選び方も紹介します。
<目 次>
腰痛は、日常の姿勢や動作に気をつけて、腰に大きな負荷をかけずにいれば自然に治るケースがほとんどです。
ぎっくり腰のような急性の腰痛なら一週間程度、その他の腰痛でもだいたい一ヶ月もあれば治ります。
以下のようなケースでは、数日安静にしてみて、痛みが徐々に和らいでくるようなら様子を見てもいいでしょう。
<考えられる腰痛の原因>
<考えられる腰痛の原因>
※2〜5のケースでは、より緊急性が高まります。こうした症状の陰に重大な病気や障害が隠れている可能性があるため、早急に医療機関を受診してください。
腰の疲労がたまっていると、ちょっとした腰の動作をきっかけに突然動けなくなるほどの激痛に襲われることがあります。これを「急性腰痛発作」といいます。俗にいう"ぎっくり腰"です。急なつらい痛みを乗り切るための具体的な方法を学んでおきましょう。
家に戻ったら少なくとも一日は静かに寝ていましょう。
前述したような楽な姿勢で休みます。仰向けに寝るなら膝を少し立てて、その下に座布団やクッションを入れて寝ます。ベッドや布団は硬めのものを使いましょう。全ての動作はゆっくりと行い、起き上がる時や歩く時は腰に負担がかからないよう壁などを支えにします。
若い人ならだいたい2〜4日、中高年でも一週間もすれば動けるくらいまで回復しますので、それまでは安静を保ち続けます。
動けるようになったら、多少痛みが残っていても歩いたり仕事をしたりして徐々に通常の生活に戻っていくようにしましょう。ただし、前かがみや中腰の姿勢、重いものを持つ、長時間同じ姿勢で作業するなど、腰痛を起こしやすい動作はしばらく避けます。
ぎっくり腰は完治するまでは大事をとって寝ているのが一番だと思われてきましたが、現在では、急性腰痛はある程度回復したら無理のない範囲で普段どおりに日常生活を送るほうが、安静にするよりも治りが早いことが分かっています。安静にしすぎることは回復を遅らせ、かえって状態を悪くしてしまうこともあります。特に高齢者の場合、寝たきりにつながる恐れもあるので過度の安静は禁物です。
痛みの激しい時期に無理に動くと症状を悪化させかねません。痛みが和らいで、ある程度普通に日常生活が送れるまで回復してから整形外科を受診しましょう。
ぎっくり腰の原因は、腰まわりの組織の一時的な障害である場合が多く、大抵1〜2週間もすれば回復するため必ずしも病院に行く必要はありませんが、中には治療が必要なケースもあります。特にぎっくり腰が初めての人は、動けるようになったら念のため受診しておくとよいでしょう。
また、「1〜2週間以上たっても症状が良くならない」、「痛みがひどくなる」、「安静にしてもどんな姿勢でも痛む」、「下半身の痛みやしびれ、排尿や排便の障害、または発熱・冷や汗・吐き気・腹痛・血尿などの内科的症状がある」といった場合も、他の病気が原因となっていることがあるため必ず医師の診断を受けてください。
ぎっくり腰を起こしてから2〜3日の痛みがつらい時期は、激しい炎症によって患部がほてって熱を持っています。こうした時は冷たいタオルや氷のう、冷シップなどで患部を冷やすと良いでしょう。冷シップは患部がひんやり冷たく感じるだけでなく、消炎鎮痛作用のある成分が配合されています。
炎症が鎮まった後は、冷やし続けると血液の循環を悪くして逆効果となります。よって、ほてりと痛みが治まってきたら、今度は血行を良くして痛みを和らげるために、カイロや蒸しタオルを使って温めるようにします。温シップは成分によっては温め効果がまったく無かったり、皮膚がただれることもあるので注意が必要です。
冷やすか温めるかは、「患部のほてり」と「心地よいかどうか」で判断しましょう。
痛み止めの薬(消炎鎮痛剤)も有効ですが、根本的な治療にはならないので短期間の服用にとどめましょう。
腰痛で医療機関を受診する場合、病院に行くかそれとも民間の整体やマッサージに行くか、病院にかかるなら受診科はどこがいいのかなど、選択肢が多くて迷うかもしれません。腰痛の原因は様々なので、最終的には精神科や神経内科、脳神経外科、泌尿器科、循環器科などで治療を行うことになる可能性もあります。
しかし、痛みの程度に関わらず、主な症状が腰痛である場合は、まずは「整形外科」を訪ねましょう。
整形外科が扱う疾患の中で、腰痛は最も一般的なものです。さらに脊椎や脊髄を専門とする医師がいる病院ならなお良いでしょう。
診察の結果、原因が腰ではなくストレスや内蔵の病気である疑いがあれば、専門の医師や別の医療機関を紹介してもらうことができます。
持病がある人の場合、持病が腰痛の原因となっていることがあるので、かかりつけの医師がいれば一度相談してみましょう。
病気の治療はすぐに効果が出るものばかりではありません。例えば一つの薬の効果を見るのに3か月くらいかかる場合があります。治療が終わるまでに3〜6か月かかることもめずらしくありません。
特に腰痛に関して言えば、自然に治る「急性腰痛」であっても、完治までに一ヶ月以上かかることがあります。慢性的な腰痛など、病院で治療を受ける必要があるケースなら、なおさら良くなるまでには時間がかかります。
患者からすれば、早く痛みをとってほしい、早く結果がほしいと思うのは当然ですが、だからといって「すぐに痛みがとれないから」とか「原因がよくわらかないから」といった理由ですぐに治療法や病院を変えていると、いつまでも良くなりません。結果を急いで病院を変えるより、最低でも3ヶ月は同じ病院で同じ治療法を試したほうが、結果的には早く治る可能性が高いといえます。
一人の医師の診察に満足できず、次から次へと病院や民間治療施設をめぐることを「ドクターショッピング」といいます。
一ヶ所で腰をすえて治療を受けないうちに次に移ることを繰り返すと、本当の治療効果がわからず、かえって適切な治療を受ける機会を逃してしまいます。
ドクターショッピングを行う人の中には、過去の苦い経験から、医者や医療に対して不満や不信を持ち、医療不信に陥っていたり、痛みや医療に対する強いこだわりや不安を持っていたりと、医療に対する考え方の"ゆがみ"が見られる傾向があります。こうした心理的要因がストレスとなって、腰痛を慢性化・悪化させているケースも多いことを知っておきましょう。
【関連項目】
「病院で詳しい検査を受ければ、病気の原因は大抵分かるものだ」という考えは、特に腰痛に関しては当てはまりません。
腰痛の約8割は原因がはっきりとわからない「非特異的腰痛(腰痛症)」であると言われます。腰痛においては原因がはっきりするケースのほうが珍しいのです。
腰痛に関する経験と知識が相当豊富な医師でもない限り、整形外科を受診しても、腰の疲れ・使いすぎによる痛みだと診断されて、痛み止め薬を処方されて終わってしまうようなケースがどうしても多くなります。
だからといって「どうせ病院ではわからないから」と決めつけて、整体やマッサージなどの民間療法だけを受けていると、重篤な病気を見落としてしまう可能性があります。「原因不明の腰痛症である」ということが分かることも大事です。そこで諦めてしまわずに、暫くは一つの治療法を続けてみること、場合によっては評判の良い病院や医師を訪ねてみたり、またはストレスや内臓の病気による腰痛の可能性を疑ってみることも必要です。
腰痛をしっかりと治療し、今後の発生を予防していくためには、腰痛は"治してもらうもの"ではなく、"自分で治すもの"という意識改革が必要です。
病気やケガをした場合、自分一人で何とかしようとして素人判断で処置を行えば病状を悪化させかねません。しかし、「あの病院の、あの先生の、あの治療法に頼って治してもらおう」といった他力本願な考え方で、全て医師まかせにするのもよくありません。病院や医師に依存しすぎることは、医療に対する過度の期待や、時には医療不信などの歪んだ考え方を生み出し、不満やストレスによる慢性的な腰痛の原因ともなります。
原因の診断や治療方針など、重要項目の決定は専門科である医師にまかせつつ、自分の症状や病歴を詳しく把握して正確に伝えたり、医師に指示されたことはしっかり守るなど、自分にできる範囲で積極的に治療に協力して、医師と一緒になって腰痛を治していこうという心構えが大切です。
【参考】
症状が改善してきた後も、「また悪くなったら病院に行けばいい」ではなく、普段から日常の姿勢や動作を改善したり、腰痛のタイプに合った適切な運動や体操を行うなど、主体的に再発予防に取り組みましょう。疲労性の軽い腰痛程度であればセルフケアを続けるだけでもよくなります。
ただ、どんなセルフケアが適切なのかは、腰の状態や腰痛の原因によって異なります。それらがハッキリしていない状態で、あてずっぽうに色々な方法を試したりすると、逆に症状を悪化させる恐れもあります。自分では適切な判断ができないと思った場合は、必ず医師の指導を受けた上で行ってください。