腰痛を引き起こす可能性のある病気や障害の一つに「肝臓がん」があります。
ここでは、その特徴や腰痛との関連について解説します。
腰の痛みのほかに、以下の様な症状・特徴が見られる場合、肝臓がんが発症している可能性があります。
|
病気の初期はほとんど症状が現れません。
肝臓がんの原因となる慢性肝炎や肝硬変を患っている場合は、それらの症状である「体がだるい、疲れやすい、食欲がない」といった症状が見られます。
病気が進行すると、肝臓の腫れ、右肋骨の下あたりの圧痛やしこり、背中や腰の痛み、腹水、黄疸などの症状もみられるようになります。他の臓器から転移したがんであれば、転移元のがんの症状も加わります。
こうした症状は、肝炎や肝硬変の症状とほぼ同じであり、肝臓がん特有の症状といえるものは殆どありません。
肝臓がん(肝がん)とは、その名のとおり肝臓にできる悪性腫瘍(癌(がん))です。
日本人に非常に多いがんで、全てのがんの約一割を占めます。年間の肝臓がんによる死者は三万人を超えており、男女比は2対1で男性に多く見られます。
がんができる原因には大きく2つあります。
一つが、肝臓の細胞からがんができる「原発性肝がん」で、もう一つが他の臓器にできたがんが転移する「転移性肝がん」です。
原発性肝がんは、「肝炎」→「肝硬変」→「肝臓がん」という順序で、肝臓疾患が悪化した結果生じるケースが最も多く見られます。
様々な要因により肝臓に炎症が発生して肝炎が起こり、肝炎が慢性的に続くと、肝細胞が徐々に壊れて肝機能が低下していきます。
肝細胞の破壊と再生を繰り返しているうちに、遺伝子変異が起こり、がん細胞が生じるものと考えられます。
肝臓がんの患者の70%は肝硬変を、25%は慢性肝炎を患っていたというデータもあります。
肝硬変になる前の状態ではガンの発症率は低いですが、肝硬変後は年間7〜8%が肝臓がんを発症するともいわれます。
日本では、ウイルス性の肝炎によって慢性的な肝炎になるケースが大半です。
原因として最も多いのがC型肝炎(約70%)で、次にB型肝炎(約20%)、残りがアルコール性肝障害(約10%)です。
C型やB型の慢性肝炎、肝硬変を持つ人は、肝臓がんの高危険群(ハイリスクグループ)と呼ばれます。ただし、肝炎が慢性化するのに10数年、肝硬変に進行するのに20〜30年かかります。そのため肝硬変や肝臓がんは50〜60代の働き盛りの高齢者に多く発見されます。
近年は脂肪肝から肝硬変になるケースも増えています。
甘いものや油っぽいもの、お米やパンなどの炭水化物をたくさん食べる人は、肝臓に中性脂肪がたくさんたまった状態「脂肪肝」になりやすいです。
肝臓は他のガンからの転移が多い臓器です。それと同時に肝臓がんも他の臓器に非常に転移しやすく、特に肝臓の内部で転移しやすい傾向があります。
肝臓がんは完全に治ったと思っても再発しやすいと言われます。これは転移によって複数箇所に同時にがんができたり、時期を変えて何箇所かに発生したりすることがあるためです(多中心性発がん)。
肝臓がんの原因となる慢性肝炎や肝硬変の有無を調べる場合は、血液中の成分から肝臓の働きや肝臓病の可能性を診断する「肝機能検査」を行います。ALT(GPT)、AST(GOT)、γ-GTPなどの値を見ます。
肝臓がんの検査法は、腹部超音波検査(エコー検査)、CTスキャン、MRI検査などの画像診断が主です。
更に、お腹から針をとおしてガンの組織を採取して調べる「針生検」も行われます。これらの検査で、がんの数、大きさ、悪性度などが分かります。
【関連項目】
がんの大きさ、個数、肝硬変のある人は肝機能の程度などを考慮し、症状や進行具合に応じた治療法が採られます。
他にも、血管に抗がん剤を注入する「肝動脈内抗がん剤注入法(TAI)」、放射線療法、化学療法、免疫療法、肝臓移植などの治療法があります。
他臓器のがんが転移した「転移性肝がん」の場合、転移元のがんも同時にしっかりと治療し、再び転移しないようにすることが重要です。
肝臓がんは再発しやすく他の臓器への転移もしやすい厄介ながんです。しかし、多くの新しい治療法と予防法が開発され大きな成果を挙げられるようになりました。現在では重症化しない限り決して悲観的な病気ではありません。
ただ、肝障害はほとんど症状が出ない場合もあり、健康診断で肝臓の異常が見つかった時には既に肝臓がんになっているケースもよく見受けられます。
予防のためには、集団検診や人間ドックは定期的に受診して、肝障害の発生を見落とさないようにすることが大切です。特に肝硬変まで進んでいる人は年に2、3回は検査を受けて早期発見に努めましょう。
【受診科】
【肝臓がんの原因となる病気】