変形性股関節症で腰が痛むケース

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『変形性股関節症』の詳細 - 症状・原因・治療法

腰痛を引き起こす可能性のある病気や障害の一つに「変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)」があります。
ここでは、その特徴や腰痛との関連について解説します。

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1.変形性股関節症が疑われる症状

腰痛のほかに以下のような症状が見られる時は、変形性股関節症が発症している可能性があります。


  • 股関節、お尻、太もも、ひざの上などに痛みや違和感がある
  • 股関節の動きが悪く、曲げ伸ばししづらい。または動く範囲が狭い
  • 足を引きずって歩く(跛行)

主な症状は「股関節から膝にかけての痛み」で、これに腰痛が加わる場合があります。
痛みなどの症状は両足に現れることが多いです。

病気の初期は、股関節・お尻まわり・太ももあたりがこわばり、だるさや重さを感じます。太ももから膝へ広がる痛み(放散痛)もあり、膝の障害と考える人もいます。
長く歩いたあとや運動後に、股関節の疲れや鈍い痛みが出てきます。痛みはしばらく休むと和らぎ、長くても数日でおさまります。

病状が進むと、「立つ」「座る」「歩く」といった動作の"動きはじめ"に痛みを感じる「初動痛」が見られ、ちょっとした動作でも痛みがでたり、痛みであまり歩けなかったり足を引きずるといった症状が現れます。
また、股関節が硬くなり、仰向けになって股関節を内側や外側に曲げようとしてもあまり曲がらないなど、関節の可動域(動かせる範囲)が狭くなります。

◆重症時

安静にして寝ていても痛む

動いている間は常に痛みを感じるようになります。最終的には安静時でも痛みが治まらなくなり、立つことや歩くこともままならなくなります。股関節の動きも非常に悪くなり、動かせる範囲がとても狭くなります。左右で足の長さの違いがはっきりとわかるようになることもあります。


2.変形性股関節症とは? - 特徴や原因

股関節まわりの構造
イラスト図解:骨盤・股関節・仙骨

骨盤と太ももの間の関節「股関節」を形成している骨や軟骨がすり減ったり形が変わったりして、股関節の動きが悪くなったり痛みを生じる病気が変形性股関節症です。


◆骨が変形する原因

股関節の変形過程
イラスト図解:変形性股関節症

健康な人の股関節が変形することは滅多にありません。ほとんどは股関節の病気やケガが原因となって起こります。

過去に股関節の異常や病気を経験したことのある人が、その後大人になってから後遺症として発症するケースが多く、全体の8割程度を占めています。
病気をした時にしっかりと治療が行われていないと、その後、骨が正常に発育せずに変形してしまうのです。

原因がはっきり分からないケースもあり、おそらく歳をとって骨が弱くなることで発症するものと考えられています。日本ではあまり見られず、逆に欧米では原因の大半を占めます。


変形性股関節症になりやすい人

30歳代後半〜50歳代の中年層に多く、特に女性に多く見られます。
赤ちゃんの時に股関節の脱臼を起こした経験がある人や、生まれつき股関節の骨や形状に異常がある人も発症しやすくなります。


変形性股関節症を誘発する病気や障害

  • ペルテス病
    3〜12歳くらいの子どもに起きる病気で、特に5〜7歳の活発な男児に多く見られます。何らかの原因で大腿骨の骨頭(太ももの骨の股関節側の先端)へ血液が循環しなくなることで骨の破壊・変形が起こります。

  • 先天性股関節脱臼
    生まれつき股関節の片方または両方が脱臼(だっきゅう)している障害で、はっきりとした原因は不明です。発育性股関節脱臼とも呼ばれ、女児が男児の6〜10倍も多いといわれます。

  • 臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)
    股関節の骨盤側のくぼみ「臼蓋」の形が生まれつき小さい疾患です。これにより臼蓋と大腿骨がうまく噛み合わず、股関節に炎症が起きて痛みを生じます。

  • 大腿骨頭すべり症
    大腿骨(太ももの骨)の股関節側の先端の丸まっている部分を「骨頭」といい、この骨頭がずれている障害です。体質や肥満、成長ホルモン異常などでズレが起こりやすく、股関節周辺が重くだるい感じがしたり、痛みが見られることもあります。発症例の少ない病気ですが、10〜14才の思春期の男子に比較的多く見られます。
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3.診断・治療・予防

◆診断

股関節のレントゲン画像
股関節のX線撮影画像

自覚症状に股関節周辺の異常があれば、過去の股関節の病気や障害の有無についても確認します。
変形性股関節症の疑いがある場合、更にX線撮影(レントゲン)で患部の骨の変形を確認して診断を下します。
より詳しい病状の確認や、似た症状を持つ他の病気との識別のために、血液検査、MRI検査、CTスキャンなどを行うこともあります。

◆治療

症状が軽い場合は、保存的療法(手術以外の治療法)で対応し、それで効果が得られない場合や症状の重いケースでは手術も検討されます。

1.保存的療法による治療

股関節を固定する装具・コルセット

まずは股関節の負担を軽くすることが大事です。
激しい運動は中止し、体重を減らしたり、杖を使って歩くなどの指導をしつつ、股関節周辺をコルセットで固定する「装具療法」、股関節の柔軟性を高めたり周囲の筋力を高める「運動療法」を中心に行います。

痛む箇所を無理に強く動かすと症状を悪化させますが、関節がこわばって動きが悪い場合は、無理のない範囲で動かすことで関節の可動域を広げ、柔軟性を高めて痛みを軽くできます。

痛みを一時的に和らげる目的では、患部を温めて血行を良くする「温熱療法」、痛み止め薬やシップを使う「薬物療法」が採られます。


2.手術による治療

一定期間保存的療法を行っても症状の改善が見られなかったり、骨の破壊や変形が進んでいて保存的療法ではあまり効果がないと思われる、または激しい痛みなどで既に日常生活に支障をきたしているような場合は手術を検討します。

人工股関節
人工関節置換術

<主な手術法>

  • 関節の形を変える手術
    股関節の骨の一部を切りとり、位置をずらすことで負荷を減らし痛みを軽減します。切り取る部分によって「寛骨臼回転骨切術」、「骨盤骨切り術」、「内反骨切術」、「外反骨切術」など幾つかの種類があります。

  • 関節を取り替える手術(人工股関節置換術)
    股関節の一部または全部を、金属やポリエチレンでできた人工関節に置き換える方法です。痛みも完全になくなり治癒効果は高いですが、激しく動くことでゆるみや故障が発生したり、人工関節の感染のリスクもあるため、特に若い人についてはできる限り他の手術法が適応されます。
    人工関節には10年前後の寿命があるため、定期的なメンテナンスや、使えなくなった際の再手術が必要です。

変形性股関節症は放置すると症状が悪化するのが早いです。股が少し痛い、何か具合がおかしいと感じたら早めに整形外科を受診しましょう。早期発見、早期治療が重要です。

4.変形性股関節症データ

【受診科】

  • 整形外科

【変形性股関節症の原因となる病気】

  • ペルテス病、先天性股関節脱臼、臼蓋形成不全、大腿骨頭すべり症
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