症状から腰痛の原因を探る - 「お腹や胸の異常」

腹〜胸部に痛みや不快感を生じる病気・障害
腰痛を引き起こす病気や障害の中には、以下のような「腹部や胸部の不快症状」も伴うものがあります。自分の症例に当てはまるものを探して原因を探ってみましょう。
- 腹痛がある(みぞおちやわき腹などの痛み)
- 腹部に固い"しこり"がある
- お腹が張る(膨満感)、カエルのように膨らむ(腹水)
- 胸焼け、胃痛、胃もたれ、むかつき、ゲップ
- 胸の痛み
※文中の「病名」を選択すると、詳しい解説ページに移動します。
現れる症状や程度には個人差がありますので、あくまで参考とするに留めてください。
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◆腹部大動脈瘤
腹部の大動脈の一部がふくらんで瘤(こぶ)のようになる病気
【主な症状・特徴】
- 腰から背中にかけての痛み
- 50〜60歳前後の中高年の男性に多い
- 腹痛や腹部のしこり、せき、息切れ、しわがれ声
- 大半は動脈硬化が元で起こる。動脈硬化の主な原因は、高いコレステロール値や中性脂肪値、糖尿病、高血圧、高脂血症、運動不足、ストレス、肥満、喫煙、加齢など
◆胃潰瘍(いかいよう)・十二指腸潰瘍
胃や十二指腸の粘膜が溶けてえぐられたような状態(潰瘍)になる病気
【主な症状・特徴】
- 空腹時や食後の腹痛(食事中は痛みが軽くなる)
- 背中から腰にかけての痛み(体の左側が傷みやすい)
- 胸焼け、ゲップ、吐き気や嘔吐、食欲不振、貧血、吐血、黒い便
- ピロリ菌感染によるものが多い。精神的ストレス、胃液の過剰分泌、ステロイド剤や抗がん剤などの薬物も要因
◆胃がん
胃に発生する悪性腫瘍
【主な症状・特徴】
- 空腹時や食後の腹痛(みぞおちあたりが鈍く痛む)。悪化すると食事に関係なく痛む
- お腹の張り、胃もたれ、胸焼け、ゲップ、吐き気
- 50〜60歳代が患者の約60%を占め、高齢者ほど発症しやすい。
- 胸、背中、腰の痛み
- 不規則な食生活、早食い、食べ過ぎ、「塩分や脂肪分・熱すぎる飲食物・米飯等」の摂り過ぎ、焦げた食物、過度の飲酒・喫煙などが危険因子とされる
◆胃下垂(いかすい)
胃の下の部分が正常な位置よりも垂れ下がっている状態
【主な症状・特徴】
- 食後の胃もたれ、げっぷ、吐き気・嘔吐、食欲不振や肌荒れ
- 食後に下っ腹が膨らむ、お腹の張り
- 胃の周りの脂肪が少ない、腹筋・背筋が弱い(やせ型で長身の人に多く見られる)
精神的ストレスや疲労、暴飲暴食など、胃の消化を悪くする要因が加わると発症しやすい
◆肝硬変(かんこうへん)
肝臓に炎症が起きた部分の細胞が壊れて硬くなり肝臓の機能が低下した状態
【主な症状・特徴】
- お腹がカエルのようにふくらむ(腹水)
- 下半身の"むくみ"や"けいれん"
- 眼の白目部分や皮膚が黄色くくすむ(黄疸)
- 肝臓の炎症(肝炎)が長期間続いて肝硬変へ進行するケースが多い。肝硬変になるまで20〜30年かかるため高齢者に多くみられる。肝炎はC型肝炎ウイルスの感染や過度の飲酒などで起こる
◆肝臓がん
肝臓に発生する悪性腫瘍
【主な症状・特徴】
- お腹の右上の痛みやしこり
- 背中や腰の右側の痛み
- お腹が張って大きく膨らむ(腹水)、眼や皮膚が黄色っぽくくすむ(黄疸)
- 肝炎(肝臓の炎症)の長期化→肝硬変→肝臓がんと症状が悪化して発症する「原発性肝がん」と、他の臓器にできたがんが転移した「転位線肝がん」がある。
◆膵炎(すいえん)
膵臓から分泌される消化酵素によって膵臓自体が消化されて炎症を起こす病気
【主な症状・特徴】
- みぞおちから左わき腹にかけての急な激痛。左肩や左背中まで響くことが多く、時には胸や腰にまで及ぶ。痛みは食事をすると強まり、絶食すると軽くなる。また前かがみになると和らぐ傾向がある
- お腹の張りやしこり、発熱、胸焼け、吐き気、下痢、黄疸など
- アルコールや胆石が原因のものが全体の約2/3を占める。体調が悪い時のお酒や脂肪の多い食事のとりすぎがきっかけで起こる
◆膵臓(すいぞう)がん
膵臓にできる悪性腫瘍
【主な症状・特徴】
- みぞおちから左わき腹にかけての痛み
- 高齢者ほど多く発症する
- 詳しい原因は不明。飲酒・喫煙の習慣、肉(脂肪)の食べ過ぎ、慢性膵炎、胆石症、糖尿病などが危険因子と考えられる
◆胆嚢炎(たんのうえん)
胆嚢が細菌に感染して炎症を起こした状態
【主な症状・特徴】
- 食事後の"みぞおち"から右わき腹にかけての急な激痛。痛みは右肩や右背中まで響くことが多く、時には胸や腰にまで及ぶ
- 38℃以上の高熱、寒気、吐き気、嘔吐
- 主に胆嚢内に石(胆石)ができて細菌が増殖して起こる。石は、食べ過ぎ、脂肪の摂り過ぎ、肥満、ストレス、不摂生、体質などが原因でできることが多い
◆胆石症(たんせきしょう)
胆のうや胆管内に石(胆石)ができる病気
【主な症状・特徴】
- 食事後の"みぞおち"から右わき腹にかけての急な激痛。痛みは右肩や右背中まで響くことが多く、時には胸や腰にまで及ぶ
- お腹の張り、発熱、吐き気、疲れやだるさ、眼や皮膚が黄色っぽくくすんだり濃い茶色の尿が出る(黄疸)、白い便など
- 食べ過ぎ、脂肪の摂り過ぎ、肥満、ストレス、不摂生、体質などが原因でできる事が多い
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◆腎盂腎炎(じんうじんえん)
腎臓が細菌に感染して炎症を起こした状態
【主な症状・特徴】
- わき腹や腰の鈍い痛み
- おしっこの回数が増えたり(頻尿)、排尿痛や残尿感がある
- 高熱、悪寒、ふるえ、だるさなど、かぜによく似た症状がでる
- 膀胱内の尿が腎臓に逆流して細菌感染する(膀胱炎、尿道の結石、前立腺肥大、尿道狭窄などの病気で逆流しやすい)
◆腎周囲炎
腎臓やその周りの組織が細菌に感染し、炎症を起こして腫れ上がる病気
【主な症状・特徴】
- 腎臓付近(わき腹あたり)の強い痛み ・発熱
- 腎盂腎炎など、腎臓の細菌感染が見られる病気の影響。細菌で化膿した部位から膿が血液に混じって運ばれてくる場合もある
◆水腎症(すいじんしょう)
腎臓に尿がたまる病気
【主な症状・特徴】
- 背中やわき腹から腰、下っ腹にかけての痛み
- 妊婦に発症することもある
- 尿路の形の異常、結石、病気による尿路の炎症などが原因で尿の流れが悪くなることで生じる
◆単純性腎嚢胞
腎臓に1個〜数個の嚢胞(のうほう)と呼ばれる液体の入った袋ができる病気
【主な症状・特徴・原因】
- 腰やわき腹の痛み、高血圧、血尿
- 歳をとるほどできやすくなり、50歳以上の約半数に見られる
- 嚢胞ができる原因は不明
◆腎下垂(遊走腎)
腎臓が本来あるべき場所よりも下に移動してしまっている状態
【主な症状・特徴】
- 腰やわき腹の鈍い痛み(横になると和らぐ)
- 胃のむかつき、食欲不振、吐き気
- 尿の異常(血尿やたんぱく尿がでる、尿があまり出ない、出にくい)
- 腎臓の周りの脂肪が少ない、腎臓につながる尿管や血管が生まれつき異常に長い、腹筋・背筋が弱い(やせた女性に多く見られる)など
◆尿路結石(腎結石・尿管結石・膀胱結石・尿道結石)
尿の通り道に石(結石)ができる病気
【主な症状・特徴】
- 背中からわき腹にかけての激しい痛み(鈍い痛みだけのこともある)
- 冷や汗、吐き気、嘔吐
- 尿の異常(血尿が出る、尿の回数が増える、排尿時の痛み、尿が出にくい、残尿感など)
- 男性の発症率が高く、30〜50歳代に多い
- 尿路の異常などで尿の流れが悪くなったり、水分不足などで尿のカルシウムの濃度が高まると石ができやすくなる
◆大腸がん(結腸がん・直腸がん)
大腸に発生する悪性腫瘍
【主な症状・特徴】
- 血便が出る(肛門からの出血や、血が混じった赤黒い便など)。痔(ぢ)の症状とよく似ている
- 高齢になるほど発症しやすく、特に60〜70代に多い
- 下痢や便秘を繰り返す、便が細くなる、腹痛や腰痛
- 高たんぱく・高脂肪・高カロリーの食事の影響が大きいと考えられる。飲酒、喫煙、肥満、遺伝、ストレス、大腸の病気、乳がん、子宮がん、卵巣がんなども発症率を高める
女性特有の病気
◆月経痛(生理痛)・月経困難症・月経前症候群
月経時に起こる様々な不快症状
【主な症状・特徴】
- 頭痛、腹痛(胃痛)、腰痛、肩こり、乳房の張りと痛み
- むくみ、冷え、めまい、のぼせ、貧血、吐き気、嘔吐、便秘、下痢
- イライラ、憂うつ、焦燥感、怒りっぽい、集中力の低下(注意力散慢)、情緒不安定
- 月経(生理)が始まって女性ホルモンの分泌が増えたりホルモンバランスが変化するため。更に疲れやストレスが重なると症状が悪化する
◆子宮内膜症
子宮の内側にできる膜「子宮内膜」が、子宮以外の場所にもできる病気
【主な症状・特徴】
- とても強い月経痛(生理痛)、激しい腹痛と腰痛
- 30〜40歳代の女性に多くみられる
- 詳しい原因は不明。月経時に子宮内膜の組織が混じった血が逆流するためと考えられる
◆子宮筋腫・子宮ポリープ
子宮内部にできる良性の腫瘍
【主な症状・特徴】
- 生理期間外の性器からの出血(不正出血)
- 生理時の出血量が異常に多い(過多月経)
- 貧血 ・おりものが増える
- 30〜40歳代の女性に多い
- 詳しい原因は不明。女性ホルモン「エストロゲン」が関係しているとみられる
◆子宮がん(子宮頸がん・子宮体がん)
子宮にできる悪性腫瘍(がん)
【主な症状・特徴】
- 月経期間外の性器からの出血(不正出血)
- おりものの異常(量が増える、臭う、血が混じるなど)
- セックス中の性器からの出血 ・貧血
- 腹痛、腰痛、足の痛み、発熱、頻尿、尿が出にくい
- 子宮頸がんはウイルス感染によるものが多く、子宮体がんは女性ホルモン「エストロゲン」が長期間分泌されると発症しやすい
◆子宮頸管炎
子宮の出入口が細菌感染し炎症が発生する病気
【主な症状・特徴】
- おりものが増える(白またはやや黄色い)
- 激しい腹痛や腰痛
- 膣の炎症が子宮頸管にまで広がるケースや、性交時、出産時、妊娠中絶手術時などに傷口から細菌感染
関連項目
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