肝硬変で腰が痛むケース

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『肝硬変』の詳細 - 症状・原因・治療法

腰痛を引き起こす可能性のある病気や障害の一つに「肝硬変(かんこうへん)」があります。
ここでは、その特徴や腰痛との関連について解説します。

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1.肝硬変が疑われる症状

腰の痛みのほかに、以下の様な症状・特徴が見られる場合、肝硬変が発症している可能性があります。


  • お腹がカエルのようにふくらんでいる(腹水)
  • 下半身に"むくみ"や"けいれん"がみられる
  • 眼球、皮膚、体液が黄色がかっている(黄疸)
  • うまく話せない、正常な判断ができない、異常な行動をとるなどの「意識障害」がみられる

肝硬変の初期は、体のダルさを感じる程度で、自覚症状がほとんどありません。
病状が進行して肝臓の機能が低下してくると、お腹に水がたまる「腹水」、下半身の"むくみ"や"けいれん(こむらがえり)"、黄疸、意識障害(肝性脳症)などの症状が現れてきます。
更に重症化すると、肝臓の機能が著しく低下して肝不全腎不全になる場合もあります。
腰痛がでてくる頃には、症状がかなり悪化していることがほとんどです。

◆こんな症状が現れることも


  • くも状血管腫
    胸、肩、首、二の腕などに細い血管が浮き出る症状。クモ状の赤い斑紋が出ることからこう呼ばれる。血管部分を押すと消えるのが特徴
  • 手掌紅斑(しゅしょうこうはん)
    手のひらの盛り上がった部分がまだらに赤くなる症状
  • 女性化乳房
    男性の乳房や乳首が女性のように大きくなるもの。痛みを伴うことが多い
  • 出血傾向
    肝臓の機能低下によって、血液を固まらせる物質や傷をふさぐ血小板が減少するため、皮下出血、鼻血、歯肉の出血などが起こりやすくなり、また血がなかなか止まらなくなる
  • 腹壁静脈怒張(ふくへきじょうみゃくどちょう)
    お腹の静脈が、へそのあたりを中心として放射状にふくれて浮き上がるもの
  • 脾臓(ひぞう)の腫れ

◆肝臓は症状が現れにくい

肝硬変の初期はほとんど自覚症状が現れず、重症でなければ普通に生活でき、病気の進行を抑えることもできます。これは、肝細胞が非常に高い再生能力を持っており、また、肝臓の細胞の一部が壊れても、残った細胞が壊れた部分の働きをカバーする機能があるためです。例えば肝臓の1/3を切り取っても、残りの細胞が増殖して1〜2か月で元の状態に戻るほどです。
しかし、こうした治癒力を超えるほど肝臓の損傷が進み、肝臓の機能が低下してくると、色々な症状が現れてきます。

高い再生能力によって少々の障害では症状が現れないことが災いして、自覚症状が出る頃には病状が非常に悪化していることも多いため、肝臓は「沈黙の臓器」などとも呼ばれます。検診で初めて肝硬変が見つかる場合も多くあります。


2.肝硬変とは? - 特徴や原因

ウイルス感染など様々な要因によって肝臓に炎症が起こり(肝炎)、炎症が進行して肝細胞が壊れると、壊れた部分が"かさぶた"のようになる「線維化」が起こり、徐々に肝臓が硬くなっていきます。こうした状態を肝硬変といいます。

線維化した部分は組織として機能しなくなります。更に硬くなった部分が肝臓の血液の流れをさまたげ、酸素や栄養素が不足しやすくなり、肝臓の働きがますます悪くなるという悪循環に陥ります。

肝硬変が進むと、最終的には肝臓の機能が著しく低下した状態である「肝不全」になったり、肝臓がんを発症する確率も高まります。炎症が治まらずに肝細胞の破壊と再生を繰り返しているうちに、遺伝子変異が起こり、がん細胞が生じるものと考えられます。
肝硬変になる前の状態ではガンの発症率は低いですが、肝硬変後は年間7〜8%が肝臓がんを発症するといわれます。

肝炎から肝硬変・肝臓がんへの進行

◆主な原因

日本では、ウイルス性の肝炎によって慢性的な肝炎になり、長い期間を経て肝硬変へ進行するケースが多く見られます。
原因として最も多いのがC型肝炎(約70%)で、次にB型肝炎(約20%)、残りがアルコール性肝障害(約10%)です。近年は脂肪肝から肝硬変になるケースも増えています。

ウイルスによる感染


  • C型肝炎
    C型肝炎ウイルス (HCV) に感染することで発症する肝炎。血液を介して感染する。針刺し事故、刺青、覚せい剤の注射などによる感染例が多い。性行為による感染や母子感染は少ない。30%は自然に治り、70%はウイルスが体内に残る「持続感染」の状態になる。持続感染から慢性肝炎になりやすく、慢性肝炎の状態が5〜10年以上続くと、肝硬変や肝臓がんが発症する確率が高まる。

  • B型肝炎
    B型肝炎ウイルス (HBV) に感染することで発症する肝炎。血液を介して感染する。性行為、針刺し事故、刺青、覚せい剤の注射などによる感染のほか母子感染も見られる。95%は自然に治り、20〜30%が急性肝炎を発症し、5%は慢性肝炎に進行するといわれる。

  • アルコール性肝障害
    肝臓にはアルコールを代謝・分解する働きがある。しかしアルコールを摂取しすぎると肝臓に多大な負担をかけ、肝細胞の異常や破壊が起きて線維化が進み、肝臓の働きが衰える。

  • その他の原因
    自己免疫疾患、代謝異常による疾患、寄生虫病、薬剤性肝障害、うっ血肝など。

◆肝硬変になりやすい人

針や注射による感染以外で肝硬変になりやすいのは、暴飲暴食の習慣がある人です。
お酒をたくさん飲む人はアルコール性肝障害の危険性が高まります。また、甘いものや油っぽいもの、お米やパンなどの炭水化物をたくさん食べる人は、肝臓に中性脂肪がたくさんたまる「脂肪肝」の状態になりやすいです。

肝硬変の原因として最も多い「C型肝炎」では、肝炎が慢性化するのに10数年、慢性肝炎から肝硬変に進行するのに20〜30年かかります。そのため肝硬変は高齢者に多く見られます。B型肝炎の母子感染が原因の場合は、若い世代に見られることもあります。

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3.診断・治療・予防

◆診断

病院での診察・診断

血液中の成分から肝臓の働きや肝臓病の可能性を診断する「肝機能検査」を行います。ALT(GPT)、AST(GOT)、γ-GTPなどの値を調べます。

肝機能検査で肝硬変の疑いが強まれば、腹部超音波検査やCTスキャンなどの画像検査で肝臓の状態を確認します。
肝硬変なら肝臓表面に不規則な凹凸があったり、脾臓がはれて大きくなるといった特徴があります。また、内視鏡検査で食道静脈瘤(※)がみられることも特徴です。

※「食道静脈瘤(しょくどうじょうみゃくりゅう)」
食道の粘膜を流れる静脈が、瘤(こぶ)のようにふくらんで曲がりくねってでこぼこになった状態。肝硬変が原因でできることが多い。

◆治療

肝硬変が生じた箇所を元に戻すことはできないため、炎症の原因を排除し、症状の進行を抑えて、肝臓の機能をある程度元に戻すことを目的とした治療を行います。
腹水、食道静脈瘤、肝性脳症(意識障害)などの合併症状があれば、それらに対する対症療法も行います。

  • 食事療法
    肝臓の状態に応じて適切な栄養を摂取します。高タンパク・高カロリー食が基本です(意識障害や脂肪肝が見られる場合を除く)。また、肝硬変になると安静時でも消費エネルギーが多くなるため、寝る前に夜食をとることがすすめられています。アルコール性肝炎が原因の場合は飲酒を控えます。
  • 運動療法
    肝臓の働きが低下すると筋肉内のたんぱく質が消費されたり、安静によって筋力が衰えるため、ウォーキングなどの運動を行います。(腹水や意識障害がある場合を除く)
  • 薬物療法
    C型肝炎やB型肝炎などのウイルス性肝炎が原因で、症状が比較的軽い場合は、抗ウイルス薬による治療を行います。黄疸や腹水、意識障害がある場合は抗ウイルス治療が行えないため、それらの障害に対する治療が中心となります。

4.肝硬変データ

【受診科】

  • 消化器内科/消化器外科/消化器科/内科

【肝硬変の原因となる病気】

  • C型肝炎、B型肝炎、慢性肝炎、アルコール性肝障害、脂肪肝、自己免疫疾患、寄生虫病、薬剤性肝障害、うっ血肝など

【肝硬変が原因で起こる病気(合併症)】

  • 肝性脳症、食道静脈瘤、肝不全、腎不全、肝臓がんなど
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